【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
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トヨタやアップル、任天堂など、世界的な企業が半導体不足により業績を落とすなど、半導体不足が与える影響が無視できなくなってきています。そうした中、各国政府は熾烈な半導体獲得競争に動き出すなど、いまや半導体はビジネスにおける超重要テーマとなっているのです。本記事では、そんな半導体に関するあらゆる疑問(どのような種類があるか、世界の主要半導体企業とは、どのように製造・供給されているのか、なぜ半導体不足に陥るのか)について解説します。
半導体不足で業績低下する企業
半導体不足がビジネスに大きな影響を与えるようになってきています。たとえば、2022年のアメリカの自動車販売台数において、これまで首位であったトヨタ自動車を抜き、ゼネラルモーターズ(GM)が首位となりました。その要因としてトヨタは原材料コストの高騰と半導体の不足により減産をせざる得なくなり、売れ筋であるSUVが8.6%減少したことが挙げられます。
また、任天堂は2022年第2四半期の会見で半導体不足による『Nintendo Switch』の2023年3月期の販売計画を従来の2100万台から1900万台に引き下げたほか、米アップルも2021年には半導体不足とコロナの影響によるサプライチェーン混乱で60憶ドルの売上減の可能性を発表しています。
それでは、なぜ半導体は不足してしまうのでしょうか。ここからは、半導体がどのように製造・供給されているかを整理した上で、半導体が不足しやすい事情を解説します。
半導体にはどのような種類があるか?
半導体不足と言っても、どのタイプの半導体が不足しているのか正確に把握している人はそれほど多くはありません。
半導体の種類には、「ロジック半導体」と呼ばれるスマホやパソコンなどでデータ処理・機器の制御を行うものや、「メモリー」と呼ばれるデータ保存に利用されるもの、「アナログ半導体」と呼ばれる音や光・温度などの情報をデジタル信号に変換するもの、「パワー半導体」と呼ばれる電圧を制御し機器を省エネ化する電気自動車などで利用するものなど、さまざまな種類があります。
このうち、ロジック半導体においては、一般的に半導体の回路の線幅(1~2桁ナノメートルの間が多い)が小さくなるほど処理能力が向上し、かつ消費電力が少なくなる傾向にあるのですが、世界の中でも回路の線幅の小さな半導体を製造できる企業は限られ、その分、供給量に制限があります。
ちなみに、『Mac book Air』などで使用されているM2チップは5ナノメートル、『iPhone 14 Pro』に搭載されているA16 Bionicチップは4ナノメートルの半導体を使用しています。また、『Nintendo Switch』のCPUは20ナノメートルの半導体を使用していると言われています。なお、自動車に使用される車載半導体で高いシェアを持つルネサスエレクトロニクスは2022年10月の決算会見で40ナノの半導体が不足していると言及しています。
このように半導体にはいくつかの種類がありますが、今回発生している半導体不足は特定の性能の半導体に限らず起きたものと考えられます。
世界の半導体メーカートップ10
それでは、半導体の主要企業はどういったところが挙がるのでしょうか。ガートナー社より1月に発表された売上高別に見た主要な半導体企業のトップ10ランキングは、次のようになります。
半導体の製造は、設計から製造まで1つの企業がすべての製品を一貫して行うわけではありません。ファウンドリーと呼ばれる、半導体の設計を行わずに、工場を保有し受託生産を行う製造専門の企業が大きな役割を担います。上記に挙がっている企業も自社ですべて半導体を製造しているところだけではなく、ファンドリーに製造を委託しています。
主要な企業としては、TSMC(台湾)、サムスン電子(韓国)、UMC(台湾)、グローバルファウンドリーズ(US)、SMIC(中国)などがあります。なお、ファウンドリーのトップ企業であるTSMCの2022年の売上高は758億8,100万ドルと発表されていますから、上記の半導体企業の売上高と比較してもファンドリー企業が半導体製造においてとても大きな役割を担っていることがわかります。
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