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  • 2015/06/30 掲載

2020年までに99%の自動車が「コネクテッドテクノロジー」を実装する北米、日本は?

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「コネクテッドテクノロジー」は自動車分野における新たな通信サービスというイメージがあるが、それは氷山の一角にすぎない。実際には、ドライビングの支援、予防メンテナンス、安全・信頼性の維持、満足度の高い顧客サービスまで包括した広範なエコシステムを築き、新たなバリューチェーンを創出していくプラットフォームだ。フロスト&サリバンのシニアコンサルタントである森本尚氏が、この「コネクテッドテクノロジー」を巡る自動車業界の取り組みの現在と将来を語った。そこで見えてきたのは、日本の自動車業界の“危うさ”だ。
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欧州では安全対策の法規制がコネクテッドテクノロジーの普及を加速

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 ビッグデータやIoTといったテクノロジーの進化は、ITの枠を超えて自動車業界のビジネスにも大きな変化をもたらそうとしている。中でも最も熱い注目を集めているのが、コネクテッドテクノロジーだ。自動車に搭載された無数のセンサーや通信ユニットによって「情報収集」と「情報発信」の機能を持たせ、多様なシステムとの連携を進めることで、かつてないスマートな付加価値を創出していくことを目指すものである。

 実際に今、グローバルではどんなことが起こっているのか――。10年後に向けた産業・ビジネスの未来を提示するカンファレンス「GIL 2015:Japan」にフロスト&サリバン 自動車・交通運輸部門のシニアコンサルタントである森本尚氏が登壇し、コネクテッドテクノロジーを取り巻く主要なトレンドと将来の展望を語った。

 森本氏によると、最も積極的な取り組みを見せているのが欧州で、「eCall」と呼ばれる車両緊急通報システムの開発が進められている。事故発生時にエアバッグ・衝突センサーやGPSなどから得られた情報をセンターへ自動送信して救助を要請するシステムで、2018年初頭までのサービスインを目指している。同様にロシアにおいても、GLONASS(ロシア版GPS)を利用した車両緊急通報システム「ERA-GLONASS」の開発が進められている。

 「これらのテレマティクスサービスが法的にも義務化されたことで、車載通信ユニットの装備は今後さらに加速していくことになる」というのが、森本氏の見通しだ。

 北米の動きも活発だ。すでにLTEや4Gなどの高速モバイル通信が拡充している背景もあり、民間企業ベースでの自発的なテレマティクスサービスの提供が進んでいる。

 さらに、ブラジルや中国といった新興国も欧米を猛追している。ブラジルでは多発する自動車の盗難および盗難車による犯罪対策が急務となっており、2016年に向けて自動車の位置追跡サービスの整備が進められている。一方の中国では車載インフォテインメントへの関心が非常に高く、「BMWやフォードといった外資系自動車メーカーが、アプリを軸としたサービスを強化している」という。

2020年までに99%の自動車がコネクテッドテクノロジーを実装する

 2015年以降のコネクテッドテクノロジーの動向を読み解くホットなキーワードとして、森本氏は「360度のサイバーセキュリティ」「自動車の予兆診断・保守」「クラウド接続」「アフターサービス市場におけるテレマティクス」「音声操作によるHMI」「自動車とスマートフォンの連携」の6つを挙げた。

 これらのトレンドを追い風としながら、コネクテッドテクノロジーを取り巻くグローバル市場はどのように推移していくのだろうか。

 森本氏が「突出したリーダー」と見ているのは北米で、「現時点ですでに56%の自動車に何らかのコネクテッドテクノロジーが実装されており、2020年にほぼすべて(99%)の自動車に普及する」と予測する。

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自動車へのコネクテッドテクノロジーの割合
(出典:フロスト&サリバン)


 これに続くのは欧州で、現時点でこそコネクテッドテクノロジーの普及率は25%にとどまっているものの、「2020年には75%に達する」と見ている。先にも述べたeCallやERA-GLONASSの義務化など法規制の動きも相まって、特に2017年以降は急カーブを描きながらコネクテッドテクノロジーの普及率が上昇していくと見込まれているのである。

 これに対して日本はどうか。残念ながら北米や欧州よりも勢いが劣っているのが実情だ。現時点でのコネクテッドテクノロジーの普及率は18%で、2020年の予測値も53%にとどまっている。「個人的な所感としては、日本はもっと大きな潜在力を持っていると思うが、需要を後押しする積極的な施策がないのが問題」と、森本氏は指摘する。

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