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利用者が拡大し続けるソーシャルメディア。日本ではTwitterの利用率が高いが、最近ではFacebookに企業の公式参入が相次いでいる。今はまだ、Facebookは企業のマーケティングチャネルとして活用されているに過ぎないが、今後ソーシャルメディアの位置付けが大きく進化し、“サービスプラットフォーム化”していくと野村総合研究所の亀津敦氏は指摘する。トヨタが新たに提供を開始した「Toyota Freind(トヨタフレンド)」から見えてくるのは、人と人のつながりに加え(ソーシャルグラフ)、そこに企業やモノさえも結びついていく(インタレストグラフ)現象だ。
人と人だけでなく、人とモノもソーシャルメディアでつながる時代に
日本にも順調に根付き、その利用が拡大しているソーシャルメディア。これまで多くの話題が割かれてきたのは、企業が消費者に対するマーケティングチャネルとして、ソーシャルメディアをどう活用していくか、といったテーマだった。
それが今後はさらに進化してサービスプラットフォーム化するという。この点について野村総合研究所の
亀津敦氏は、「ソーシャルメディアが、自社サービスを提供する際の全プロセスに関わる基盤になること」だと説明する。
これを示す最も象徴的でインパクトの大きかった最近の事例として、亀津氏は今年5月に発表された自動車向けソーシャルネットワークサービス「Toyota Friend(トヨタフレンド)」を挙げた。
「Toyota Friend」はトヨタ自動車と米Salesforce.comが連携し、2012年からの提供開始を予定しているもので、Salesforce.comの提供するソーシャルコラボレーションサービス「Chatter」を採用し、その上に「Toyota Friend」という新しいソーシャルネットワークを構築したものだ。
消費者(=車のオーナー)と自動車メーカーのエンジニア、あるいはディーラーや他のオーナーなどとToyota Friendを介してつながることができる。
たとえばディーラーからオーナーに向けて、“最新モデルが出たので、お店に見にいらっしゃいませんか?”というようなつぶやきを送ることができ、それを見たオーナーとディーラーの関係が深ければ、実際の来店や買い替えにまでつながるかもしれない。
あるいは車が故障した時に、オーナーからメーカーのエンジニアに向けて、簡単な問い合わせやより具体的な対応策などを相談することも可能だ。「従来のダイレクトメールや直接訪問などに加えて、もう少し緩やかにつながり続けることができる場を提供するもの」(亀津氏)だという。
ただし、この範囲までのサービスは、今までにも他の企業が運営するソーシャルネットワークサービスに見られたものだ。
「Toyota Friendが非常に画期的なのは、人と人とがつながるだけでなく、“人とモノ(車)もつながることができる”という点だ」(亀津氏)。
たとえば走行中、車が運転手に対して“右のタイヤの空気圧が低くなっています。空気圧を補充してください。約2Km先に○○ガソリンスタンドがあるので、そこに入りませんか?”というメッセージをカーナビの下に表示させるということが可能になる。
実際の仕組みとしては、車のセンサーがタイヤの空気圧が低いという状況を感知して、それを人間を読めるメッセージに変換して発信するというものだ。
「これが人間対人間というソーシャルなつながりの中に、モノも一緒に入ってきた時の一つの姿」(亀津氏)
またこの時、ガソリンスタンドの場所はカーナビと連携することで車が教えてくれるが、亀津氏は将来、発展系サービスとして、近辺にガソリンスタンドが複数あった場合に、Toyota Friendに入っているスタンドを優先的に推薦するということも起こってくるのではないかと予想する。
「Friendというのは非常に象徴的な言葉。企業と消費者が友達になるだけでなく、企業と企業、あるいは企業が提供するプロダクトもその輪の中に入ってくる。その先駆けという点でこの新しい取り組みは非常にインパクトがある」(亀津氏)。
【次ページ】すべての人/モノが1つのソーシャルメディア上でつながる
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