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- 2023/09/08 掲載
レノボの「最先端工場」が凄すぎる? 独自AI活用による“6時間→90秒”の生産革命の全貌
【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
パンデミックどう切り抜けた? レノボの工場運営とは
レノボは自社・合弁会社含め中国・ドイツ・ハンガリー・インド・メキシコ・アメリカ・アルゼンチン・ブラジル・日本など世界に35以上の生産工場があり、年間1億台以上の製品の出荷を行っています。そんなレノボも、多くの企業と同様に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けました。たとえば、レノボの工場の1つがある中国の武漢では2019年12月に感染者が報告されており、2020年1月には同市でロックダウンが発動されています。レノボも2020年の1~2月には武漢市のスマートフォン工場含めた中国の複数の工場について、現地で示された制限に対応するか、完全封鎖する必要があったと振り返っています。
そうした中、工場の従業員がいかに安全に仕事に復帰するか、製造プロセスに関連するメンバーの安全確保のための適切なチェックをどのように行うかの検討・実行を進めました。当時、同社は工場の運営に関して次のような対応を進めました。
■供給量の調整
2020年1月から、同社は供給能力と工場の状況を「作戦指令室」で可視化しつつ、すべてのリーダー職に就く人間がエンドツーエンドの正しい状況を把握できるよう整備している。これにより、今後発生する影響を先取りし、サプライヤーや工場、各国のリーダーと明確にコミュニケーションをとることが可能になった。
その際、過去数年間に構築していたデジタル機能を活用することでチームメンバーが自宅でシームレスに作業ができたことも有効であった。
■工場の従業員の確保
工場での生産再開と生産量の増加に伴い、同社はオンラインで人材採用ができるように整備している。また、従業員のバスでの輸送、現場までの移動、カフェテリアや敷地内の宿泊施設、生産ラインにわたってあらゆる要素を検討し、必要な対応を行った。
また、新しいメンバーと経験豊富なメンバーを組み合わせて品質を確保する運用方法を採用したほか、ツールの準備して人員配置・供給予測・パフォーマンス管理に役立てた。
こうした対応策により、工場運営の影響を最小限に抑えたのです。そして、これらを実現するには、複数チーム間のコラボレーションが不可欠だったのです。
国境閉鎖に運航停止…レノボは供給問題をどう解決した?
コロナ禍では、ロジスティクスも大きな影響を受け、飛行機の運行停止や世界の国境の閉鎖などが発生したため、さまざまな対応を行う必要があったと振り返っています。通常時、同社の製品の航空機輸送量は旅客便が半分以上を占めていますが、旅客便の運航が大きく減少して必要な量が輸送できなくなってしまったため、中国向けにマスクなどを運んだ貨物飛行機の帰り便のスペースを確保したり、工場から船・トラック・鉄道などでいったん輸送した後、シンガポールなどのハブ空港から飛行機で輸送したりするなど、さまざまな手段をとりました。
製品の生産拠点についても、たとえば米国や欧州の供給需要を満たすために、新たにブラジルの工場で製造できるように生産ラインを移動するなど、生産場所の複数拠点化を進め、必要な製造量を確保するような対応も行っています。
また、リーダーの振り返りとして、危機管理には、早期のエグゼクティブのエンゲージメントと意思決定、明確でひんぱんなコミュニケーションが必要だと述べられています。また、グローバルの拠点をどのようにデザインして、レジリエンス(回復力)、アジリティ(俊敏性)の高い製造ネットワークを構築するかが、供給に混乱があった場合も顧客にサービスを提供し続けるためには重要だったと述べられています。
このように、コロナ禍においても迅速な対応により、危機を乗りこえた同社ですが、その象徴的な事例として評価されているのが、レノボが中国で運営する合肥工場です。ここからは、同社の最先端工場の取り組みを解説します。 【次ページ】レノボ「最先端工場」の秘密、“6時間→90秒”のスゴイ裏側
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