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日本でもさまざまな場所で実証実験が始まっている「自動運転」。米国では今年からグーグル系のウェイモ、GMと提携するクルーズなどが自動運転タクシーを導入したり、ドライバーがいない車両での実証実験が始まったりなど一歩進んだ段階だ。そして中国ではさらに進化した自動運転社会が実現しかけている。技術的には劣らない日本で自動運転が実現しにくい事情とは何か。大津市と京阪バスの実証実験を中心に、自動運転が普及するために日本が乗り越えなければいけない課題を考察する。
各地で進行するバスの自動運転実験
日本での自動運転の実証実験は、公共という観点からバスで行われるケースが多い。経済産業省と国土交通省は、「高度な自動走行・MaaS等の社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行等を活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」という試みを行っている。
この取り組みでは、経産省・国交省から産総研に委託、そこから技術面ではバス開発コンソーシアム(先進モビリティ、いすゞ自動車)、実際の公道での実証としては自動運転バスコーディネーター(日本工営)にそれぞれ外注。バスコーディネーターが支援するプロジェクトとして全国で5つの事業体が選ばれている。
その5つの事業体は、(1)茨城交通(2)大津市、京阪バス、(3)神奈川中央交通、(4)神姫バス、(5)西日本鉄道である。最初は小型バスによる実証実験が行われていたが、事業製向上のため2019年度以降中型バスの開発と実証実験が始まった。
中型バスとして使用されている車両は、いすゞ自動車が提供しており、全長9メートル、全幅2.3メートル、乗車定員56人。最高速度は50キロ時となる(一部自治体では現代のバスも利用)。このバスを使い、実際に緑ナンバーを設置して料金を支払う乗客を乗せた実証実験を行ったのが、大津市と京阪バスによる滋賀県大津市での実証実験だ。
大津市と京阪バスの実証実験の概要
2021年3月30日、大津市自動運転実用化プロジェクト会議が開催され、2020年度に行われた自動運転バス実証実験の検証などが行われた。
大津市・京阪バスの自動運転実証実験は2018年、19年に続き、2020年7~9月にJR大津駅ーびわ湖大津プリンスホテル間のおよそ3.9キロを1日20便走行させた。公道においては自動運転化レベル2(ハンドル、アクセル、ブレーキ操作を自動運転で行うが、運転手の操作が最優先となる)を採用。この区間には信号が9カ所、電車踏切が1カ所ある。
実証実験の目的は以下の3項目。特に技術的課題としては信号や踏切との連携検証、一部区間でのGPS受信不良への対応(路面への磁気マーカー設置)、キャッシュレス決済への対応(非接触型モバイル乗車券検証)が挙げられた。
- (1)格営業運行を想定した形で、自動運転に対する地域の受容性や交通サービスの満足度の確認
- (2)現時点の技術面、運営面などでの課題確認
- (3)本格営業運行に向けたビジネスモデルの検証
大津市と京阪バスは、2020年からこの自動運転バスを実装するタイムラインを有していた。しかし、コロナの影響で実証実験の予定がずれ込んだこと、さらに実証実験中に2度の事故があったことなどから、現時点では時期尚早という結論で、今後も実証実験を続けながら実現を模索する段階だ。
事故は左折時に後輪がわずかに縁石に擦れたものと、Uターン旋回時に車体左前のセンサーカバーが歩道柵の支柱部分に接触したもの。最初の事故は運転手によるハンドル中立設定が正しく行われなかったことが要因で、運転手のハンドル介入処置がやや遅かったことも原因とされる。
2度目の事故は運転手による車幅感覚の判断ミスが要因だが、車両と周辺の構造物との距離に余裕が少なかったこと、車両搭載センサーには総路上の車や人は検出・制動する機能があるが、走路外の歩道柵や縁石といった構造物を検出する機能がなかったことなども原因として挙げられる。
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