- 会員限定
- 2023/12/01 掲載
なぜ富士フイルムは高年収?「平均年収1000万超え企業」の突出した“指標”とは
主要事業とは? 売上の6割は“ある事業領域”
そもそも富士フイルムは、どのような事業で稼ぎ、これほどの企業に成長してきたのでしょうか。現在、富士フイルムは4つの事業に分けてビジネスを展開しています。■主要事業
(1)ヘルスケア(医療・医薬品・サプリ)
メディカルシステム、バイオCDMO、ライフサイエンス
※CDMO:薬品の製法開発から製造までのプロセスの受託する事業
(2)マテリアルズ(電子材料・ディスプレイ材料)
電子材料、ディスプレイ材料、その他 高機能材料、グラフィックコミュニケーション、インクジェット
(3)ビジネスイノベーション(複合機・OA機器・DX商材など)
オフィスソリューション、ビジネスソリューション
(4)イメージング(カメラ・プリンターなど)
コンシューマーイメージング、プロフェッショナルイメージング
4つの事業の柱のうち、主力事業はどれになるのでしょうか。同社IR資料「中期経営計画 VISION2023」を見ると、売上はヘルスケア事業が1番大きな割合で、次にマテリアルズとなっています。全体の6割をヘルスケアとマテリアルが占めていますが、バランスよく事業分散されており、ポートフォリオに安定感があると言えます。
デジカメやスマホの普及により写真フィルムの需要が激減する中で、富士フイルムは培った技術を応用し「写真フィルム」→「カメラ」→「プリンター」、そして「医療分野」へと進化を続けており、まさしく「変化に強い会社が生き残る」を体現している企業と言えるでしょう。
突出した投資額? 富士フイルムが注力する “ある領域”
そんな富士フイルムが目指す方向性は、同社の掲げる企業理念、ビジョン、企業行動憲章・行動規範、CSR計画「SVP2030 (Sustainable Value Plan2030)」などから読み解けます。「わたしたちは、先進・独自の技術をもって、最高品質の商品やサービスを提供する事により、社会の文化・科学・技術・産業の発展、健康増進、環境保持に貢献し、人々の生活の質のさらなる向上に寄与します。」
「オープン、フェア、クリアな企業風土と先進・独自の技術の下、勇気ある挑戦により、新たな商品を開発し、新たな価値を創造するリーディングカンパニーであり続ける。」
特に企業の在りたい姿を読み解くことができる企業理念とビジョンを見みると、注目すべきは、どちらにも共通して「先進・独自の技術」というキーワードが使われています。それでは、「先進・独自の技術」とはどの分野の技術を指し、これによってどのような成長戦略を考えているのでしょうか。
そのヒントになるのが、同社の設備投資・研究開発費です。これを見ていくと、最も投資金額が大きいのは、ヘルスケア事業、次にマテリアルズ事業となっています。特にヘルスケア事業に対する投資額は突出しており、注力分野となっていることが分かります。
これを踏まえ、『VISION2023』に記載されている長期的目標を見ると、投資額の突出したヘルスケア領域の中でも下記のようなポイントが掲げられています。
- メディカルシステム:AI・ITソリューションビジネス、手術室ビジネスの拡大
- バイオCDMO:遺伝子治療薬のCDMO、製造拠点新設
- ライフサイエンス:創薬支援(再生医療/培地/試薬)
富士フイルムの売上規模・業界シェアまとめ
あらゆる事業を展開する富士フイルムですが、それぞれ業界におけるポジションはどの位置付けになるのでしょうか。各事業のランキングをまとめました(※業界動向サーチ、各社IR資料、「会社四季報」業界地図 2023年版をもとに筆者作成。商品のジャンルや事業部の絞り込み方により、結果は大きく変わるため、データの見方には注意が必要です。あくまで傾向を掴むために活用ください)。国内におけるポジションを見ると、医療機器業界の主要企業の中でも売上高はトップクラスに位置づけられます。上位企業の成り立ちを見てみると、テルモは当初から医療機器メーカーとして設立していますが、富士フイルムをはじめ、オリンパス、HOYA、ニプロはフィルムやレンズなどの製造ノウハウを生かし医療機器を手掛けるようになった企業です。つまり、現在活躍している多くの医療機器メーカーは、自社の既存のノウハウをどれだけ応用できたか、という点で勝負してきた企業と言えます。
その中でも、富士フイルムはフィルムやレンズ製造などのハード面のノウハウだけでなくAI/IT技術、バイオ技術、光制御材料技術のノウハウも磨き強みと言えるまで昇華しました。経営理念にもある「先進・独自の技術」を追い求めた結果、ハード・ソフト両面において医療を支える企業となり医療機器メーカーのシェアNo.1の座につけたのでしょう。
一方、単純比較とはなりませんが、国内売上1位であった富士フイルムのヘルスケア事業ですが、世界の医療機器メーカーの時価総額で見てみると16位という結果でした。日立製作所(9位)は臨床検査用装置、キヤノン(13位)は画像診断機器で先を行く中、富士フイルムも上位を目指し追いかけているというポジションにあるようです。
上位は名だたる強豪ぞろいですが、富士フイルムはいかにして世界シェアの拡大を狙うのでしょうか。同社HPには「現在、戦略として重視しているのは、世界経済をけん引する新興国市場や当社シェアが低い地域での拡販・シェアアップです」とあります。
つまり、富士フイルムがいま力を入れたいエリアは、大きく分けて(1)新興国市場(中南米やアフリカ)、(2)拠点数のわりにシェアが低い地域(欧州)だと考えられます。
このように、多角的に事業展開を行い、それぞれの事業領域でランキングの上位に位置する富士フイルムが「年収が高い」ということにはある程度、納得がいきますが、なぜ業界の中でもトップクラスの平均年収となっているのでしょうか。もう少しだけ、富士フイルムの経営を深堀りしてみます。 【次ページ】富士フイルム「高年収」の3つの理由
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR