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- 2024/11/14 掲載
「103万円の壁」は何が問題なのか? どう変わろうとしているのか?
基礎控除等を一気に178万円まで引き上げる?
現在、サラリーマンなど給与所得を得ている労働者は、基礎控除48万円と給与所得55万円(給与水準に応じて変わるものの、55万円以下にはならない)の合計103万円が控除されるので、年収103万円以下の労働者には所得税はかからない。基礎控除というのは、もともと戦後の栄養不足などを考慮し、カロリー計算などを基準に作られたもので、簡単に言ってしまえば、103万円より低い年収の人は生活が困難であることから、税金は徴収すべきではないという考え方に立脚している。国民民主党は、今回の総選挙において基礎控除等の金額を103万円から一気に178万円まで引き上げるという政策を掲げ、大幅に議席を増やした。選挙に惨敗した自民党は国民民主党との政策協議に入っており、国民民主は自らが掲げる基礎控除の拡大策を受け入れるよう要求している。
もし控除額が178万円まで引き上げられた場合、103万円を超えて稼いでも所得税はかからないので、学生やパートなどの、いわゆる働き控えが解消すると同時に、同時にこうした人たちの手取りが増えると国民民主党は主張している。
ただ、103万円の壁を基準にした控除の制度は少し複雑であり、手取りが増える、減るというという話については、もう少し細かく見ていく必要がある。
まず学生の場合だが、103万円を超えると理屈上、所得税がかかる。このため、たとえば104万円の年収があった人、つまり103万円との比較では1万円余分に稼いでしまった人は、その中から所得税についていえば500円を支払う必要が出てくる。収入が増えた分の1万円がまるまる手には入らないものの、手取りが減ってしまうわけではない。加えて言うと学生の場合には、勤労学生控除という制度があるため、現実には130万円までは所得税の課税を回避することが可能だ。
一連の制度は十分に周知されていない面があり、103万円を超えると自身の手取りが減ってしまうと勘違いしてる人も多く、これも働き控えを誘発する原因のひとつとなっている。
本人の手取りは減らないが、親の手取りは減る可能性がある
ここまでは本人の所得税に関する話だが、学生の場合、親の扶養に入っていることが多く、扶養している親の立場からすると別の作用が働く。具体的には親の控除額の変化である。学生の年収が103万円を超えると、本人に所得税が課される(勤労学生控除を申請しなかった場合)と同時に、親の扶養対象から外れてしまう。そうなると親の扶養控除がなくなるため、親の税金が増える可能性がある。つまり学生本人は損しなくても、親の税金が増えてしまうため、親が子供に対して「これ以上働かないでほしい」と要請するケースは少なからず存在するとみられる。
一方、主婦(主夫)のパートについてはさらに話が変わってくる。 【次ページ】厚労省はすでに壁をなくす方向性で制度改正を検討中
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