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  • 2025/03/31 掲載

賃上げ続くも「財布の紐が堅い」世代とは?見えてくる“日銀が利上げしなかった”ワケ

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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2025年の春闘では、労働組合が提示した要求を会社側がそのまま受け入れる「満額回答」が相次ぎ、2年連続で5%を超える平均賃上げ率が続いたが、3月の日銀の金融政策決定会合では、金融政策を維持し政策金利を0.5%で据え置くこととなった。賃金が増加し消費が拡大すれば、利上げが実施される可能性が高まるが、現状は、5%超の賃金上昇が2年継続しているものの「個人の消費」が拡大していない。その原因とは?
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賃上げで実際に私たちの生活は豊かになっているのか
(Photo/Shutterstock.com)

今回「利上げはナシ」、次の利上げは何月?

 日銀は3月19日まで開催されていた金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定した。1月の利上げから6週間しか経過していないほか、トランプ政権による通商政策の不透明感が強いこともあって、政策効果を見極めたいとの判断だろう。2月の講演で利上げに前向きな見解を示した田村委員と高田委員もそれぞれ賛成票を投じ、全員一致の決定となった。

もっとも、「今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の『展望レポート』で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」という方針は維持された。

 このような理由から現状維持が決定されたわけだが、それでは次回の利上げのタイミングはいつ頃になるのだろうか。筆者は、現時点で次回の利上げを7月(30・31日)と予想しているが、6月(16・17日)か5月(4月30日・5月1日)の可能性も十分にあるとみている。また6月に予定されている長期国債の買い入れ減額についての中間評価では、減額ペースの加速が決定される可能性も考えられる。その時点で、長期金利が急上昇していなければ、より積極的なバランスシート縮小計画が示されるだろう。

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日銀が金融政策の現状維持を決定した理由は?
(Photo/Shutterstock.com)

2年連続5%超の賃上げ率は実に「30年ぶり」

 筆者が利上げ予想を示す最大の根拠となっているのは、賃金上昇率の加速である。3月14日に連合が公表した2025年春闘の第1回回答集計によると賃上げ率は5.46%となった。これは、約30年ぶりの高い伸び率となった2024年(の第1回回答集計値)をプラス0.18%ポイント上回る数字だ。また純粋な賃上げ分であるベースアップ(ベア)はプラス3.84%となり、こちらも2024年から0.14%ポイント加速した。

 こうした賃金上昇率は、間違いなく、利上げ確率を高めたといえる。日銀は、これまで基調的な物価上昇率を見極める上で、賃金が鍵を握るとの見解を繰り返し示してきた。

 足もとではお米や野菜など生鮮食品の値上がりがきついこともあり、物価上昇率を加味した実質賃金の好転にはなお時間を要す見込みであるが、名目賃金上昇率は「オントラック(経済物価情勢が日銀の見通し通りに推移すること)」を間違いなく満たしている。

 しかも、今年で(はっきりとした)賃上げは3年連続となる。持続性を帯びてきたという点で、去年より足腰のしっかりとした賃上げといえ、これは利上げを正当化する。しかしながら、本当に賃金上昇の恩恵を受けられていると実感している人は少ないのではないだろうか? 【次ページ】賃上げするも利上げに至らず…カギとなるのは「個人の消費」
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