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- 2014/06/13 掲載
いすゞが提唱する「MLE」、商用車ビジネスを変革する予測メンテナンスと部品寿命予測
乗用車とまったく異なるトラックの開発の難しさ
「Data Business for Connected Vehicles Japan 2014(Telematics Update主催)」に登壇した前園氏は「乗用車の運転で、ベタ踏みしていることはほとんどないだろう。トラックではパフォーマンスを発揮するために、耐久レースを競っているようなところがある」と語る。そのため、乗用車よりも壊れやすい傾向にあるようだ。
法律で定められた制約もある。荷物を積んだ状態でクルマの総重量は25トン以下に制限されているが、トラックのセールスポイントは荷物をどれだけ積めるかということになる。利益を生む軽量化は、まさに商品力に直結するからだ。
前園氏は「現在、我々のトラックは最大15トンまで対応できるが、荷物をより多く積めるように、エンジン、タイヤを含めたシャーシの軽量化を図っている。これは信頼性と矛盾する要件であり、困難もはらんでいる」と説明する。
いすゞでは、かなり昔からエンジンのダウンサイジングに着手してきた。大型トラックのエンジンは、30リットルから9リットルまで下げており、それにもかかわらず15トンまでの荷物を積載できる。このように軽量化と信頼性の両立を図りながら進化を遂げてきたわけだ。
またディーゼルエンジンの排ガス量については、欧州を中心に規制が進んでいる。排ガスの浄化装置が付けられ、どんどん精密になってくると、信頼性の維持が難しくなるという問題も起きてくる。
「消費者にトラックを安定的に使ってもらうことは、すなわち物流の安定化につながる。各国の基盤となる経済活動を維持することに寄与するものだ。軽量化・精密化と、従来以上の信頼性や予期しないトラブル防止を両立させる困難な課題に向かいながらクルマを開発している現状がある」(前園氏)。
寿命予測に活用できる「MLE」という概念
一般的な自動車産業の構造をレイヤー別に見ると、上から、材料を供給する「Material Layer」、部品をつくる「Parts Layer」、それらを組み立てる「Assemble Layer」がある。さらに中間層では、完成した自動車を流通させる「Distribution Layer」や、顧客となる「User Layer」が位置付けられる。
そして下層に、クルマの維持・管理を担う「Maintenance Layer」があり、そして最後に「SLC(2nd Life Creation) Layer」が存在する。これは中古車を扱ったり、部品を再生したり、解体したりするレイヤーだ。
前園氏は、「この中で商用車(CV: Commercial Vehicle)についていうと、特に“Maintenance Layer”が重要になる」と指摘する。
商用車で一番問題になるのは稼動の最大化だ。これを解決するには2つのプランがあるという。「1つ目はトラブル・故障・不具合を即時に把握すること。ここにはテレマティクスがかなり威力を発揮する。現在、我々が提供する技術でもサポートしているので、分かりやすいだろう」(前園氏)。
一方、2つ目の予測メンテナンス(predictive maintenance)は大変難しい。そこで前園氏が新しく提唱しているのが、「MLE」(Machine Life Engineering)という概念だ。
「機械の寿命を予測することは、エンジニアリングの問題だ。データを活用しながら予測メンテナンスを構築していくためには、MLEはどうしても避けて通れない。しかし、現在、このMLEという概念が根本的に欠如している。データを使って新しいビジネスにつなげていくという意味でも、王道にしなければいけない」(前園氏)と力説する。
【次ページ】MLEとは何なのか?10%超のコスト削減の可能性も
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