CIO・システム部長に聞く、情報システム部門の自己改革
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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第21回は、東京エレクトロン 執行役員 IT本部 本部長の小泉恵資氏に話をうかがった。
グローバルITガバナンスの仕組みを作り上げる
小泉氏がIT本部長としてIT本部を任されるにあたり、社長からはITコストの20%削減を指示された。小泉氏は、単にコストを下げるのみならず、グローバルITガバナンスを強化し、社長の指示を大きく越えるコスト削減を果たした。
まず組織体制は、CIOの下に、本社及び各国現地法人のIT部門長を配し、人事評価においても責任と義務を果たし、参画意識の向上と達成感を得られる様にしている。また、主要な部長には、各社のITを任せるのみならず、OA系、生産系、技術系と領域別にグローバルに横串で全体最適を推進させ、本社の意向の各国への浸透、各国の要望の本社への集約を行う体制とした。
全てのIT投資の予算審議は、IT本部に移した。事前に作成された設備投資ガイドラインに準拠されたものが各国からIT本部に申請され、IT本部内の上記領域別のスクリーニング後、最終的にCIOが判断を行う。経営陣へのIT設備投資申請の説明はCIOが行い、承認を得ている。経営陣には、向こう3ヵ年のIT投資計画を示し、個別テーマがどこに位置するか明確化することで、理解を深めている。投資判断では、グローバル全体最適とROIを厳しく見て判断する。IT投資の決定を全てCIOに集約するにあたっては、各国からの反対も多かったが、何度もコミュニケーションをとって、必要性を理解してもらった。
コスト削減は、仮想化、統合、クラウド活用などによって実現した。現在グループ各社のシステムはほぼ本社に集約。本社がシェアードサービスとして各国に提供している。現在は、税制や人事管理など一部をローカルに対応させ、ほとんどの機能をグローバルに統合している。
経費に関しては、外注費を例外なく半減させた。これは、各国を回って得た、外注費をもっと下げられるという直感。それまで各国で、個別最適でシステム化を推進し、早期にシステムの開発や保守を行うために現地で持っていた外注リソースが、全体最適の中ではかなり少なくて済むという見通しを基に、トップダウンな実施を決断した。もちろん、一気に外注費を下げるリスクに関しても吟味し、コントロールできることを確認しての決断だった。
ディシジョンがCIOの仕事である
IT投資のCIOの下への集約にしても、外注費の半減にしても、結局CIOがいかに腹を括ってしっかりと決断できるか。関係者を納得させられるかである。小泉氏は、CIOの仕事は、このようなディシジョンであると認識している。
これはシステム部門のメンバーから見ると、CIOは自分達の提案を決断し、失敗した場合の責任は取ることを明言し、必要な予算を獲得し、メンバーの努力を経営に伝えてくれるということである。
たとえばPDMの再構築では、その当時のPDMが保守費に見合う価値を上げていないことを基に、この保守を止めて、保守費3年分を使って、新しい、もっと効果のあるシステムを作ることを決断した。この決断では、保守を止めた間に何か問題が発生すれば、それはCIOの責任であると明言した。小泉氏の部下は、厳しいけれどやりがいがある仕事をしているはずだ。
現在小泉氏は、IT本部の新しい方向を打ち出している。それは、コストセンターからバリューセンターに脱皮することだ。
これまでの活動で、ITコストは大幅に削減できた。ガバナンスも強化して、このコストが大幅に上ることはないはずだ。そこで今後は、IT本部の提案力を高め、ビジネスに貢献する価値を提供していく。そこでまず、IT本部のメンバーそれぞれに、自分が生み出せる価値は何か考えさせ、意識を変えるところから開始している。
では、次ページより、小泉氏との対談インタビューの全体を紹介しよう。
【次ページ】私はディシジョンするためにきた
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