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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第6回は、東芝の本社システム部門であるISセンターのセンター長 峯村正樹氏と、システム子会社である東芝インフォメーションシステムズの代表取締役社長 六串正昭氏に話をうかがった。
東芝グループには、グローバルに6000人のIT人材がいる。このような巨大組織の自己改革には、仕組み化が欠かせない。東芝はこれまでに、CMMやプロフェッショナル認定制度などの仕組みを導入し、しかもこれらをしっかりと定着させている。
仕組み化による自己革新を推進する
東芝では、プロジェクト・マネジメント力強化のために、1999年からCMMに取り組んだ。これは、2000年問題に対応する大規模プロジェクトで、計画遵守率が低下したことへの対策である。CMMを用いて、俗人化していたプロジェクト・マネジメントのプロセスを明確に規定した。2001年5月にレベル3、2005年には、レベル4、5を取得している。CMMの導入によって、プロジェクト・マネジメントのKPIの見える化を実現し、またこれらの継続的な改善が可能となった。CMMは現在、東芝固有の条件を加味して、さらにブラッシュアップを進めている。
2002年7月には、景気低迷に対応したITコスト削減のために、開発運用の専門子会社、東芝インフォメーションシステムズを設立すると共に、SLAを導入して、サービスと価格の明確化を図った。これにより、それまでの「システム部門が言うITコストは仕方がない」というパラダイムを、適正なサービスとコストを追求することへとシフトさせた。また、東芝インフォメーションシステムズ内に、コスト意識を醸成した。SLAでは、主要なKPIを明確化し、国内外の同業他社との定期的なベンチマークを実施し、自社の弱みを明確化して、継続的な改善を進めている。なおコスト削減のチャレンジでは、たとえば2002年から2004年に、運用コストを20%削減している。
2003年上期からは、プロフェッショナル認定制度を確立した。これは、IT人材の能力を客観的に評価するもので、8職種8段階の人材ビジョン、スキルセット、認定方法を規定している。プロフェッショナル認定制度の確立によって、IT人材一人ひとりが、自分自身のキャリアを見通し、自立的な能力向上を進められるようになった。また、マネジメントとして、人材育成状況を把握し、育成のさらなる推進や、選抜型育成の実施が行えるようになった。
改革を根付かせて成果を得る
では東芝は、なぜこのような改革を矢継ぎ早に実施し、しっかりと運用し効果を上げることができるのだろうか。実はそのためには、峯村氏や六串氏をはじめとした幹部の努力や、仕組み定着のノウハウがある。
東芝のシステム部門では、上述の仕組み導入に当たって、「幹部が何度も思いを語る→幹部の思いに共鳴する人材を見つける→彼らをコアとして組織に思いを広げる」というサイクルを使う。たとえばCMM導入当初、社員は、プロジェクトの進捗をきちんと文章化することを、自分の仕事だとは思っていなかった。そこで峯村氏をはじめとする幹部が自ら推進役になり、なぜCMMが重要なのか、これで何を達成しようとしているのか、繰り返し社員に語りかけた。そのような中で、コアとなる共鳴者を生み出し、彼らに仕組み確立の重要な役回りを任せ、徐々に共鳴者を増やしていった。
仕組み確立に必要な体制、リソースを充実させることも、重要な方策である。たとえばプロフェッショナル認定制度の確立では、各組織にこの仕組みを定着させる体制を作ると共に、構築から立ち上げまでは10人前後の専任推進体制を維持している。また、認定(人材の評価)では、管理職が認定対象者一人ひとりの面接・評価に、多くの時間を割いている。
最後に最も重要なことは、幹部のトップダウンによる推進である。上述の思いを語るサイクルや、体制リソースの確立は、トップがリードしなければ進まないのである。
東芝ではさらに、新たなチャレンジとして、2008年からIT戦略の策定推進を始めた。これは、従来のビジネスの動きを支援する方法に加え、IT側からプロアクティブに中期戦略を企画し、ITがリードしてこれを推進する方法である。すでに、情報基盤のグローバルなリニューアルや、システムのグループ・グローバルでの標準化、TCOのさらなる削減などを開始している。たとえばTCO削減では、仮想化により、1600台あったサーバを60台に集約している。また、グループの経営に貢献するため、先行して革新を進める事業会社で構築したシステムを、その後世界に横展開することを継続している。
では、次ページより、峯村氏、六串氏との鼎談インタビューの全体を紹介しよう。
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