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DX銘柄2024の「グランプリ」を受賞したアシックスの実務担当者が、書籍『マンガでわかるDX』を題材にDXの成功術や苦労話を解説する本コラム『マンガとアシックスに学ぶDX成功法』。アシックスのDX担当者による実際の体験談からDX推進のヒントをお届けします。第1回は、アシックスが世界で躍進を遂げたターニングポイントとして挙げた「基幹システムの刷新」について解説します。(書籍『マンガでわかるDX』~マンガ第1話<全7ページ>を無料でダウンロードできるページも用意しています)
世界の売上・在庫情報を「Excel」などで集計していた
アシックスは1949年に神戸市で創業し、2024年で創業75周年を迎えた歴史のある会社です。日本発祥のスポーツブランドとして、国内にとどまらず、主に北米・ヨーロッパ・豪州・中華圏など海外へとビジネスを拡大してきました。
『マンガでわかるDX』ではDXを推進し始めようとしているシーンが紹介されていますが、アシックスは(DXを開始した時期ではありませんが)2005年ごろにターニングポイントを迎えました。この時期を境に、国内と海外の売上比率が逆転し始め、海外ビジネスの勢いが増してきました。一方で、「システムのグローバル化が進んでいない」ことによる業務効率の悪さなど、いくつかの課題が浮き彫りになっていたのです。
「システムのグローバル化」とは何か。例として基幹システム(ERP)を挙げて説明します。基幹システムは、一般的に企業資源計画を一元管理するシステムで、主に生産業務・購買業務・物流業務・販売業務・会計業務・人事業務などのビジネスの基幹となる業務情報を処理実行します。
当時アシックスでは「地域最適」の考えが主流で、それぞれのリージョン(地域)が別々の基幹システムを活用していました。約20以上のシステムが稼働していたため、全リージョンの売上や在庫情報を集めるには、本社のスタッフがExcelなどを用いて集計する必要がありました。
これは大変非効率なだけでなく、リアルタイムで情報を収集することが不可能でした。この状況を脱するために行ったのが「全リージョンで基幹システムを統一する」、つまりシステムのグローバル化です。
このシステムをグローバルで統一するという考え方は、システムというIT分野を飛び出し、アシックスの経営戦略にもなりました。2024年1月1日~2026年12月31日を実行期間とした「中期経営計画2026」では、「GIE(Global Integrated Enterprise)への変革」を方針として掲げ、グローバルでダイナミックな経営の実現を目指しています。
振り返って実感した「最も大切なDXの本質」
「システムのグローバル化」は、基幹システムにとどまりません。商品開発の基盤となるシステムや自社ECサイトであるasics.comなどほとんどすべてグローバルで統一し、社内運用効率化を図ったほか、お客さま目線での統一も進めました。
以前はフィットネス・トラッキング・アプリ「ASICS Runkeeper」や、ECサイトでの購買や閲覧などは、別々のIDを振り分けて管理されていましたが、これをロイヤリティプログラム「
OneASICS(ワンアシックス) 」を使って1つの顧客IDにまとめ、CDP(Customer Data Platform)という、グローバル統一のシステムに顧客情報を集約し、活用する体制を構築しました。これによってお客さまとの直接のコミュニケーションや、個々の目的・レベルに適したパーソナライズされた価値・体験を提供できるようになるなど、当社のビジネスは大きな変革をとげました。
このように、システムの統一化をはじめとするアシックスのDXの取り組みは、成長戦略として作用し、ビジネスのグローバル化とともに歩んできました。『マンガでわかるDX』のマンガでは「DXの本質」という言葉が出てきていますが、我々がこれまでを振り返ってみて最も大切なこととして明らかだったのは、「DX推進は変革のための手段であった」ということです。
DX推進そのものをゴールとして捉えるのではなく、ビジネス目標を達成するために、DXが手段として非常に効果的でした。昨今、DXはトレンドキーワードですが、DXという手段の目的化は避けたほうが良いと実感しました。
次回は、グローバル基幹システム導入の事例から、DX推進のヒントをお伝えします。
書籍『マンガでわかるDX』~マンガ第1話(全7ページ)のPDFデータをダウンロードできます
→ダウンロードはこちらから
(https://www.sbbit.jp/document/22119)
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