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- 2024/10/15 掲載
地方製造業のアイシン九州と武蔵精密が「低コスト」で革新的DXに成功できたワケ
製造DXの成功事例の少なさ、立ちはだかる「コストの課題」
自動車部品と半導体製造装置を手がけるアイシン九州。同社を取り巻く環境について、同社 DX推進室 室長の熊谷 隆之氏は、「自動車販売台数の減少や需要の変化などにより、今後はモノづくりだけでは立ちゆかない」との危機感を示した。一方で、DXによる競争力向上の取り組みが必須であるものの、「成功事例が国内ではまだ少ないのが現状だ」と熊谷氏は話す。たとえば、DXに向け、まずは工場設備のIoT化を推進したいが、「工場の設備は20年以上経過したものがあり、最新のIoTツールを実装するには、改造等のコストが相当かかる課題がある」と熊谷氏は話す。
また、デジタルツール導入によりペーパーレス化、紙媒体の可視化を進めるにも、「ツールの中には利用者にとって使わない機能があるものがあり、また、ツールの習熟などで2、3年はあっという間に過ぎてしまうことが考えられる」という。
こうした課題を解決し、DXの取り組みをスピーディーに進めていくことが同社の課題だった。
アイシン九州のDXの方針、工場生産ラインをどう改善?
アイシン九州のDX方針は、「デジタル化は可視化することが目的ではなく、改善のための手段であること」を念頭に置いている。現在取り組んでいるのが「フェーズ1」とも呼ぶべき「工場生産ラインの生産性向上」だ。工場生産ラインの付帯作業をなくしていくもので、熊谷氏は「改善の畑を見つけるツール開発を重点に活動している」と説明する。ツール導入に際しては、安価で単純なデジタルツールを最大限に活用し、素早く業務効率の向上を目指すために、電子工作キットと利用用途の幅が広いMicrosoft Excelのマクロ/VBAを組み合わせ、自作することが有効と考えた。
また、オンプレミスとクラウドの役割の明確化については、生産ラインの異常を顕在化させ、改善を加速させるためのツールはオンプレミス、アウトプットの情報を複数の部署が共有、活用して業績評価するツールはクラウドというすみ分けを行った。VBAの属人化問題については、全社的な要件定義書を作り、標準仕様書として活用することで解決した。
そして、自社リソースで対応が難しい領域については、学術機関や異業種企業の技術者、あるいは熊本県からの技術支援などの外部の知見、ノウハウを借りながら進めていったという。
続いて、生産部門のDXの取り組みについて見ていこう。 【次ページ】生産性の低さを可視化する秘策
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