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工場自家発電力を地域供給する「豊橋マイクログリッド」とは
続いて、武蔵精密工業 エネルギーソリューション事業開発部 部長の高森 直宏氏が、同社がGXとして取り組むカーボンニュートラル施策について紹介した。
高い精度が要求される自動車、バイクの精密機能部品の製造販売を手がける同社の現状について、高森氏は「電動化により2輪のEV駆動ユニットなどの新規事業の必要性が高まっている」と話す。モビリティのほか、インダストリー、ウェルビーイングといった領域で新規事業の取り組みが進んでおり、GXの取り組みはエナジー領域で「事業活動そのものを通じて社会課題の解決に貢献することを最重要視しているという。
同社は、2021年、事業活動でのカーボンニュートラルの実現を2038年までに目指す「ムサシカーボンニュートラル宣言」を行った。2030年に、2018年比でCO2排出量を50%削減することが目標で、そのための手段として事業用PV(太陽光発電)で自家発電を増やしていくことが、発電コストが安価で有効だとの結論に至った。
同時に蓄電池を併用し、昼間の余剰電力を蓄電池にため、夜間に使うことも検討した。こうして構築、2024年4月から運用を開始したのが「豊橋マイクログリッド」だ。
地域マイクログリッドとは、災害等による大規模停電発生時に電力会社の系統から切り離し、太陽光発電や蓄電池等の施設より、地域に電力の安定供給を行うシステムで、豊橋マイクログリッドは、同社の植田工場の屋根に設置した太陽光パネルで発電を行い、平時は工場の生産活動に電力を使う。そして、災害時には自家発電力を近隣の第1指定避難場所に最大5日間、供給するものだ。
2018年比で約18%のCO2排出量を削減できたワケ
高森氏は、豊橋マイクログリッドの経済効果について、「補助金での相殺分を含め、PVの発電単価は、1kw当たり21万5,000円で、蓄電池も1kw当たり9万3,000円にまで抑えられている」と話す。
平時の運用は、2024年7月と8月の実績ベースで、実機の利用率が91%だった。蓄電池が止まってしまうことが数回あり、そのメンテナンスを含んだ値であり、ほぼ計画時のシミュレーションどおりの実績だったという。蓄電池は200kw/hの発電量の蓄電池を3基設置している。1碁故障しても残りの2碁が稼働することができ、非常に高い使用率が実現できている。
また、太陽光パネルは、今年中に追加で250kwの太陽光パネルを設置することを計画中だ。これにより、CO2の削減量は約140トン削減できる試算で、これは2018年比で約18%のCO2排出量削減に相当する。高森氏は「当初の目標値は30%削減だったため、太陽光パネルをもう1碁追加し、500kw体制で目標達成を見込んでいる」と話した。
開発期間は、補助事業ということで、最短3カ月のプランを作成。翌年に構築事業として合計9カ月の開発期間だった。「構築事業の前にPoCを実施し、さらに開発期間短縮に寄与したのがモデルベース開発だ」と高森氏は話した。これは、日射データやPVの容量、蓄電池容量といったパラメーターを入力し、MILS(Model In the Loop Simulation)と実機の検証を繰り返すことで精度と高めていくものだ。
今後の挑戦について、太陽光パネル設置の制限が課題だという。工場の建物は年月がたっていて強度が不足しており、強を含めると設置費用が高額になってしまうからだ。
駐車場にカーポート型のパネル設置も検討したが、市街地調整区域で設置ができないという問題があった。検討の結果、ダイヤフラム方式の部分補強でパネルを設置可能な事業者が見つかった。これにより費用面も当初見積もりの1/15程度に低減できることが分かった。
さらに、法改正により、マイクログリッド構築を条件に、1つの需要場所に系統から複数の配電線を引き込むことが可能になり、より安価な高圧用の受電設備を新設できるようになった。これにより、受変電のコストは1/2に低減するという。
今回のマイクログリッドの取り組みは、非常時の自助・共助の実現と、平時の中小企業のカーボンニュートラルの両立をコンセプトに、再生可能エネルギーの地産地消を目指して取り組んだもの。
その上で高森氏は、「マイクログリットの設備使用に関しては知見、ノウハウが社内に蓄積されてきたので、ぜひお気軽に相談、工場見学などの問い合わせをいただきたい」と締めくくった。
本記事は2024年9月4日~2024年9月6日に開催された「Factory Innovation Week」の講演内容をもとに再構成したものです。
同セミナーは10月の「名古屋Factory Innovation Week」でも
開催予定 です。
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