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- 2025/03/27 掲載
なぜ今? ANAが過去最大級の「旅客機爆買い」、総額2兆円投資の裏で起きていること
連載:北島幸司の航空業界トレンド
注目の新機材その1:ANA初の「エンブラエル機」
今回の発注は、コロナ禍で抑制していた機材の更新や追加発注を再開し、旺盛なインバウンド需要などの将来的な航空需要の拡大に対応する狙いがある。また、航空業界の“脱炭素化”に向けた最新鋭機への更新の意味も大きい。これにより、2030年度にはグループ全体の機材数が約320機となり、低燃費機材の構成比は91%に達する見込みだ。
始めに、今回発注した注目の新機材2つを紹介する。
1つ目は、ANAグループとして初めて発注したエンブラエル機。100席クラスのエンブラエルE190-E2型機を20機(確定発注15機、オプション5機)導入し、国内地方路線の需要変動に機動的に対応する計画だ。

この機材は、2028年度から導入開始を予定しており、低燃費・低騒音性能により運航コストの抑制と環境負荷の低減が期待されている。
初のエンブラエル機の発注は驚きではあるものの、JALグループやFDA(フジドリームエアラインズ)では運航中であり、導入への布石はあった。国産リージョナル機MSJ(三菱スペースジェット)計画の休止以降、ANAは国内リージョナルマーケットに投入する機材を模索しており、もともとMSJにも搭載される予定であったエンジンを装備するエンブラエル機に落ち着いたという訳だ。
プラット・アンド・ホイットニー製のGTFエンジンは、MSJが搭載することにより有利な性能を得て他社機を引き離す予定であったのが、ライバルのエンブラエル機に搭載されてANAの受注を得たことになる。
注目の新機材その2:国内初の「異端旅客機」
2つ目の注目点は、ANAグループの格安航空会社(LCC)ピーチ向けにエアバスA321XLRを国内で初めて発注したことだ。この機材は、単通路機ながら超長距離飛行が可能であり、“異端旅客機”などの異名も持つ。

同じくANAグループで国際線LCCのAirJapanは、ボーイング787で飛んでいるが、今回のA321XLRの導入で、両社ともにオセアニアなど新たな市場開拓に貢献するものの路線が完全に競合することが見込まれている。
つまり、ANA本体以外のグループ内2社で「乗客の食い合い」が発生する可能性が出ている。
A321XLRの発注は、ピーチが過去にバニラエアと統合したように、AirJapanの統合も視野に入れているといっては過言だろうか。
しかし、それを示唆する数字があるので紹介しよう。
それらを読み解いていくと、今回の大量発注はインバウンド需要への対応だけではないことがわかる。 【次ページ】“AirJapan統合”の話が出てもおかしくないワケ
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