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- 2025/02/14 掲載
東京海上HDと提携「ICEYE」とは?いまフィンランドの防衛産業に「お金が集まる」ワケ
輸出額1.6兆円に成長見込み、フィンランドの防衛産業
北欧フィンランドは人口560万人ながら、世界をリードする企業が複数存在する。中でも防衛産業関連は、年間成長率(CAGR)が30~40%という成長分野であり、144社のスタートアップがひしめく競争の激しい領域でもある。さらに防衛産業は、軍事利用だけでなく民間利用との二重利用により投資を集めやすい。ロシアのウクライナ侵攻によって、2022年にはベンチャーキャピタル(VC)投資が急増、翌年には減少したが、2024年には緩やかに増加した。
フィンランド国営の投資企業Tesiの資料によると、2023年の防衛関連の総輸出額は26億ユーロで、今後10年で100億ユーロ(約1.6兆円)に成長することが見込まれている。
人工衛星スタートアップ「ICEYE」とはいかなる企業か?
防衛産業の中でもさまざまな分野があるが、特にフィンランドは衛星関連で強みを持つ。その中でもトップを走るのが、SAR衛星(合成開口レーダー衛星)製造で世界一のシェアを誇るICEYE(アイサイ)だ。SAR衛星とは、人工衛星に搭載されたSARセンサーを用いて地表を照射し、反射波を受信・解析することで地表の状態を画像化して観測する衛星である。
SAR衛星の特徴は主に以下の4点が挙げられる。
- 太陽光ではなく電波を照射するため、天候の影響を受けにくく、悪天候時や夜間でも観測できる。
- 観測対象の材質(人工物か、自然物か、水か)を識別できる。
- 太陽光の影響を受けず、一定の条件で同じ地点の観測を継続できる(ただし軌道や観測確度により変動する場合がある)。
- 地表の形状や性質に関する画像情報を取得することができる。
SAR衛星は、土木・建設、インフラ業界などで活用されており、災害エリアや険しい山間部など人の立ち入りが困難な場所の観測にも適している。
ICEYEのCEOであるラファル・モドルゥスキー氏は、2012年に後のICEYEとなるプロジェクトを設立、2014年に法人化した。
モドルゥスキー氏は、ポーランドワルシャワ大学で電気工学を学び、在学中にマルチメディア・テクノロジーズ・サイエンス・グループを設立。その後フィンランドのアールト大学で学び、VTT(フィンランド技術研修センター)でRFID(無線自動識別)、ワイヤレスセンシングなどの研究開発に携わった。2018年にはForbesが選ぶ「30歳未満の特筆すべき30人」に選出された。
ヘルシンキ郊外にあるICEYEのオフィスは旧ノキアの所有ビルで、各部屋の名称はノキア時代のものがそのまま使用されている。そのため一見テレコミュニケーション企業のように感じるが、現在はビルのすべてがICEYEの所有であり、衛星の製造も同ビル内で行われている。 【次ページ】スペースXのロケットで打ち上げ、東京海上HDなど保険業界が注目のワケ
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