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- 2023/07/25 掲載
日本の「空飛ぶクルマ」が世界的に評価される理由、スカイドライブCEOに聞く展望
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
空飛ぶクルマの運用を予定している主要企業一覧
空飛ぶクルマを手掛けるスタートアップは航空会社、商社、自動車メーカーなどと提携を進め商権獲得を目指す。空飛ぶクルマは呼称であって正式名ではない。整理してみると、経済産業省が提唱する「次世代空モビリティ」が最新の名称になる。海外ではeVTOLやアーバン・エア・モビリティ(UAM)の名前で浸透している。今回は、貨物輸送のドローンはさておき、旅客人員輸送に使われる、新世代の移動体がパリ航空ショーでどのように取り上げられたのか現地で追ってみた。
日本では、自社開発または提携で空飛ぶクルマの運用を予定している主要企業は次のようになる。
マルチコプター、リフト・クルーズ、ベクタースラスト 3つの特徴
開発が先行する機体の種別は、マルチコプター、リフト・クルーズ、ベクタースラストの3つである。それぞれの特徴は次のようになる。
マルチコプター:垂直方向を向いた複数のプロペラの回転数を可変させて離着陸と巡航を行う。航続距離は限定されるが、システムがシンプルで静音性に優れる。
リフト・クルーズ:巡航用の翼と水平方向のプロペラ、離着陸用の垂直方向のプロペラを持ち、マルチコプターと推力偏向の中間的な特性を備える。
ベクタースラスト:翼やプロペラを離着陸時は垂直方向、巡航時は水平方向に偏向する。可変するシステムは複雑になるが、高速で長距離飛行が可能だ。
では、世界ではどのような企業が開発を進めているのだろうか。
ドイツ、中国…有力な世界のUAM企業
パリ航空ショー会場には「パリエアモビリティ」と名付けられた特設会場が設置され、空飛ぶクルマを含めて航空宇宙分野のスタートアップ企業が集まった。ここでは、「脱炭素化の課題に直面している航空輸送の新たな革命の核心に迫る」と宣言しており、1000m²の展示場に81の企業が集まり展示、交易し議論を深めた。以下に有力な企業を紹介する。・ボロコプター
ボロコプター本社広報に所属するシニアPRマネージャーの糸賀 晶子氏は、「弊社はJALさんと提携しており、来年には型式証明を取得し、欧州での商用飛行を実現します。続く2025年の大阪万博では商用飛行運航事業者4社のうち1社に選ばれており、順調に計画が進んでいます」と話してくれた。
実は、このボロコプターはパリ航空ショーで毎日午後に行われる飛行展示の開始時に飛んだ唯一の機体となる。順調な仕上がりを実際に飛んで見せたのだ。
・イーハン
中国の「イーハン」は、広州に拠点を置き自立型航空機(AAV)の製造を行う。日本への進出も早く、エアモビリティ事業者のAirXと提携し全国6都市での試験飛行を済ませている。
・リリウム
ドイツの「リリウム」は同社の電動モーターで駆動する小型のダクトプロペラを持つリリウムジェットを製造する会社である。東レは2015年に炭素繊維複合材料の供給契約を締結した。2023年はFAAのG1認証基準を取得した。今後はEASAの認証も得て2025年後半には世界で商用運航を開始する。
・ボルトエアロ
ドイツの「ボルトエアロ」はパリ航空ショー会場で初披露したCASSIO330にカワサキモータースのエンジンを搭載することで提携発表を行った。カワサキモータースCEO 伊藤 浩氏が登壇し、次にように語った。
「航空事業への参入は親会社川崎重工のものだけではありません。安くて軽くてハイパワーなエンジンを異業種へ供給できないか模索しており、UAMにたどり着きました。ハイブリッドのエンジンを搭載し、電動のVTOL機とは一線を画す航続距離の長い航空機を目指します」(伊藤氏)
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