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  • 2023/05/11 掲載

コロナ禍でも“継続”成長した「あの航空会社」、ライバルはバス?ユニークな戦略

連載:「北島幸司の航空業界トレンド」

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コロナ禍において世界中で国境は封鎖され、航空路線が消えたことから、航空会社はコロナ禍の影響を受けた業種として最大の注目を浴びた。数ある航空会社の中で、2021年の輸送力が2019年比で世界最大の落ち込みを記録したのは、日本にも乗り入れている香港のキャセイパシフィック航空だ。逆にコロナ禍前に比べコロナ後に輸送力を伸ばした航空会社があるとは想像すらできなかったのだが、実は地球の反対側にその航空会社はあった。両社の違いはどこにあるのだろうか。その差を比較した。
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有償旅客キロ(RPK)での200社の航空会社ランキング。2021年とコロナ前の2019年の増減を比べてみると、93%にあたる186社は輸送力を落としたが、7%にあたる14社は2021年の輸送力がコロナ前を超えた
(出典:Ciriumより筆者作成)

輸送力マイナス97%、衝撃の落ち込み 香港の航空会社

 2021年の輸送力が2019年比マイナス97%と衝撃の落ち込みとなったのは、香港のキャセイパシフィック航空。1344億RPKあった数字は41億RPKへと急降下し、航空会社ランキングは世界16位からジェットコースターのように134位もランクを落とし、150位へとどん底の記録となった。

 この数字は、世界TOPランクの航空会社が1社まるごと消えて無くなったと同程度の数字となる。日本の航空会社にたとえると、ANA規模の航空会社がグループ会社のピーチアビエーションの輸送力になった以上の差が出たのだ。それでも、同社は経営破綻せずに持ちこたえた。

 キャセイパシフィック航空は、戦後の1946年に2人の元空軍パイロットが始めた歴史あるフルサービスキャリアだ。1959年には香港から羽田空港を結ぶ路線で就航を開始し、日本からは台湾と香港へ多くの旅客を運んだ。日本でも爽やかな緑色のデザインの機体は親しまれている。香港は、中国への玄関口として栄えただけでなく、アジアの金融街の中心として、増やる貨物需要の受け皿として大きく取り扱いを増やしてきた。

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コロナを経てキャセイパシフィック航空は1344億RPKから41億RPKへと急降下した
(写真:筆者撮影)

なぜここまで輸送力を落としたのか

 キャセイパシフィック航空が輸送力を落としたのは、中国のゼロコロナ政策の影響を受け、香港の国境が長期封鎖されていたことが大きい。香港が受けた影響はそれだけではない。

 コロナ禍前には、民主化デモによって香港政府は大きく混乱していた。続き、国家安全法が制定された。そして民主化組織の弾圧と選挙方法が改編となった。毎年のように国家が混乱する事態が起きていた。そのような報道を受け、海外からの渡航者が減ったのは言うまでもない。

 キャセイパシフィック航空が拠点とする香港は「香港特別行政区政府」からなる。小さな地域であるが故、香港国際空港を飛び立つフライトは国際線しかない。これで、国境封鎖をすれば航空会社に営業をするなと言っているようなものだ。似たような事例はシンガポール航空にもあてはまり、事実同社も輸送力を落としている。

 また、キャセイパシフィック航空の運航機材は合併前のキャセイドラゴン航空の一部を除いて大型機しか存在しない。輸送力が下がったので、小型機を活用し運航費用を軽減させるという手段が使い辛(づら)かった。



経営危機の救世主は「貨物業務」

 そのような経営危機を救ったのは、貨物業務。貨物取り扱い実績で常に上位に位置するのが香港国際空港である。歴史からも、中国本土発の路線ができる前は、貨物はずっと香港経由で世界中に動いていた。それ故に、HACTLと呼ばれる香港エアカーゴターミナルは世界各地の貨物ターミナルの手本となる存在として異彩を放ってきた。

 2019年の輸送力比較で旅客1344億RPK、貨物113億RFTK(有償貨物トンキロ)の数字が、2021年では旅客41億RPKと貨物82億RFTKで旅客の-97%と比べて貨物は-27%となり、貨物の落ち込み比率は旅客に比べて格段に低い。そして、売り上げで比較すれば一目瞭然だ。

 2021年の旅客43億香港ドルの売り上げに対し、貨物は323億香港ドルと貨物は旅客の7.5倍もの売り上げがある。日系ANAとJALではコロナ後でも旅客の売り上げが高いのと比較してキャセイパシフィック航空の貨物業務の貢献度が際立っており、会社を救ったと言って間違いない。

 一方、コロナ前に対してコロナ後に最大の輸送記録比率を残したのは2021年の有償旅客キロ(RPK)にて世界21位にランクインしたメキシコのある航空会社だ。 【次ページ】コロナ禍でも輸送力を伸ばしたメキシコの航空会社の戦略を公開
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