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世界のエアラインはコロナ禍でダメージを受けた。その中でも他方面に比べ欧州のエアラインへの影響は大きかった。輸送力が下がった中でも米国・中国・中東エアラインはさほど順位を変えずにランキングしているが、欧州エアラインは一部のLCCを除き、フルサービスキャリアが軒並み順位を落とした。そのような厳しい状況の中、フィンランドの航空会社フィンエアーは日本路線を重要視し圧倒的な地位を築く。それはなぜか。フィンランドと日本の関係性を振り返りつつ、その戦略を追った。
厳しさ続くフィンエアーの経営状況
2019年の輸送力において、フィンエアーは385億有償旅客キロ(RPK)で、世界53位だった。しかし、2021年では51億RPKで世界130位にまで順位を落としている。身近なエアラインと比べると、ピーチ アビエーションよりも7%多いだけで、ANAの24%の輸送力でしかない。
2022年に入り、ロシアによるウクライナ侵攻の影響という試練もある。ロシアと1300キロにわたって国境を接するフィンランド発着の路線は、ロシアを迂回(うかい)する空路を取るのに他国よりもさらなる燃油費の増加を招いた。
決算に関しては、第 4四半期の比較可能ベース 税引前利益(EBIT)は 2 四半期連続でプラスとなり、収入および搭乗率も増加した。
※収益は旅客収入の大幅な増加により、66.2%増の6億8,730万ユーロ(4億1,350万ユーロ)
※比較可能な営業利益は1,790万ユーロ(マイナス6,520万ユーロ)。営業利益は3,800万ユーロ(マイナス6,020万ユーロ)
※旅客搭乗率PLFは72.3%(49.6%)
大きく改善しているものの、2022年1月~12月の比較可能な営業利益はマイナス1億6390万ユーロ(マイナス4億6890万)。営業利益はマイナス2億60万ユーロ(マイナス4億5440万)と厳しさは続いている。
注:( )内は前年同期数字
欧州は大西洋を介して米国との結びつきが大きいのは貿易量を見るとわかる。国際通貨基金IMFの貿易統計の方向性を見ると、EUでの輸出における米国向けは日中への貿易額合計の4割多い。欧州のあまたあるエアラインと大西洋線の大競合の渦に巻き込まれるよりもフィンエアーはロシアを介してつながるアジア路線を重視することで他社との差別化を図った。
日本を重視するフィンエアーのビジネス展開
フィンエアーはアジアの中ではどの国に重点を置いてビジネスを展開しているのかひも解くと、ベンチマークとなるのはフィンランドから日本と等距離にある中国だ。中国は人口で日本の11倍、国土面積は25倍もある大国だ。遠い欧州から見て、単純に数字だけを比較すれば中国に航空輸送のポテンシャルのあることは誰が見ても明らかだ。
にもかかわらず、フィンエアーはアジア諸国の中でも日本を重要視しており、それは路線数に現れている。日本に就航する欧州エアラインは、コロナ禍前にはANA・JAL日系2社を除くと12社あった。その中で経営破綻したアリタリア航空を除くと、輸送力が最小のフィンエアーが日本において最多の路線を開設した。
世界の航空事情が安定していたコロナ禍前の2019年度実績でフィンエアーは中国線を北京、上海、南京、広州の4 空港へ週 21 便、対して日本線は成田、関西、名古屋、福岡(夏期)、札幌(冬期)の5空港、また最大で週34便を就航させていた。両国を比べると、日本線は62%となり、中国線の2倍の数がある。現在の冬スケジュールではこれまでに就航していた成田空港路線に加え、羽田路線も就航開始となったことから、ますます日本線の重要度は増している。
【次ページ】フィンエアー日本支社長に聞く、日本市場の魅力
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