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  • 2023/01/25 掲載

コロナ禍で大幅赤字…苦境LCCピーチが挽回狙う「非航空事業」と2023年の展望

連載:「北島幸司の航空業界トレンド」

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日本のLCCが誕生して10年が経過した2022年。累計旅客数は人口の7割近くまでになり、航空業界にLCCが浸透したことを改めて感じることができた。一方でコロナ禍が航空業界に与えた影響は大きく、いまだ厳しい状況は続く。日本で初めてのLCCとして運航開始したピーチ アビエーション(ピーチ)は、打開策として昨年末に新機材のエアバスA321LRにて関西国際空港とバンコクを結ぶ初めての中距離路線を開設し、10年目を締めくくった。ピーチのこれまでの軌跡を振り返りつつこの路線の持つ意味を考えてみたい。
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日本で初めてのLCCとして運航開始したピーチの10周年を振り返る
(写真:筆者撮影)

10年間でLCCの市場はどのように変化したのか

 ピーチは毎月約2回の頻度でセール運賃を掲げ、日帰り旅の「0泊弾丸運賃」や一定期間内に乗り放題となる「ピーチホーダイパス」、目的地をくじで決める「旅くじ」など独創的な商品作りで老若男女の顧客層を開拓して来た。コロナ禍で赤字が続いたとはいえ、行動制限も無くなり、地の底を這(は)うようにもがいてきたエアライン各社もようやく国際線で増便を始めた。

 当初の10年でLCC市場は大きく変化した。2番目に就航したジェットスター・ジャパンと3番手のエアアジア・ジャパンが市場に名乗りを上げた。約1年後にエアアジア・ジャパンと提携を解消したANAが作ったのがバニラエア。そして、ピーチとバニラエアは統合した。新生エアアジアも就航したが、コロナ禍で日本市場から撤退した。

 ANAグループとは言え本体の経営とは距離を置き、独自性を貫いていたピーチだが連結子会社となり、現在ではANAの予約サイトにPeach便が表示されるようになっている。そしてJALグループのジェットスター・ジャパンとは規模が近い中で一騎打ちの様相で進み、競争関係は激化している。JALがグループに取り込んだスプリング・ジャパンは国内と中国路線で、JAL100%子会社のZIPAIR Tokyoも中・長距離路線で競合する。


ミドルコストキャリアを上回るLCCの輸送力

 日本の航空業界でのLCCのシェアはどの程度のものなのか、数字の比較は全て2022年3月期の有償旅客キロ(有償旅客数×輸送距離)で行った。日本の空はANAとJALの大手2社でほぼ7割の輸送力を持つが、次高いシェアを誇るのはLCCの3社(ピーチ、ジェットスター・ジャパン、スプリング・ジャパン)で15.1%である。

 ミドルコストキャリア(MCC)と呼ばれる、1998年から就航開始したスカイマークとAir Do、ソラシドエア、スターフライヤーより、社歴が半分に満たない若いLCCがより大きな輸送力を持つ。また、大手2社の次の国内第3位の輸送力はピーチが持っているのだ。

 ちなみに、MCCが13.4%、4社のリージョナル航空(アイベックスエアラインズ、フジドリームエアラインズ、オリエンタルエアブリッジ、天草エアライン)が2%のシェアを占める。

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大手2社に次ぐシェアを誇るピーチ
(写真:筆者撮影)

 LCCがMCCの輸送力を上回ることができたのは、国際線の積極的な開拓であることは間違いない。LCCの成長は、日本政府のインバウンド強化策と一致する動きを見せている。ジェットスター・ジャパンは元々オーストラリアのジェットスターグループの日本法人であり、外国人に認知度は高い。ピーチにおいても、その名前のわかりやすさは外国人向けだ。中華圏では「楽桃航空」の名で親しまれている。

【次ページ】コロナ禍で大打撃を受けたピーチの経営状況
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