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- 2022/12/28 掲載
JALに聞く「スマートエアポート構想」、アフターコロナで空港はどう変わったのか?
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
コロナ禍で必須となった非接触対応とHEPAフィルターの存在
エアラインは巨大な装置産業だ。JALでは230機を超える航空機を保有または借用し、コストを掛けて維持している。コロナ禍において飛ばせなくなった航空機を地上に置いておくしかない状況が長く続き、収益を生み出せなくなった。結果として構造改革を加速することとなり、多くの部門でIT化を推進した。接客部門では顧客との非接触の場面を増やすことを目標にした。また、航空機内での感染症対策も注目された。三密の状態がそろった機内においてコロナへの罹患(りかん)が心配されたからだ。しかし、それは杞憂(きゆう)だとわかった。エアラインや航空機メーカーがこぞって機内換気は徹底されているとしたからだ。
ここで脚光を浴びたのがHEPAフィルターの存在だ。HEPAフィルターとは、空気中のごみやほこりなどを取り除くエアフィルターの一種。
リージョナルジェットなど一部の小型航空機を除き、この高性能なHEPAフィルターは航空機メーカーでは標準で装備されてくる。高高度を飛行する航空機は与圧を地上に近いものに保つと同時に機内換気は必須だ。このフィルターを使えば、機内の換気は上下方向に2~3分で完全に入れ替わることが証明された。国際航空運送協会(IATA)でも、公共交通機関の中では、航空機が一番換気性能の良いことを証明した。
コロナ禍の空港を変えた「スマートエアポート」
機内での安心が担保されたのちの旅行者の懸念はフライト前後に利用する空港での対策に向いた。実はJALの取り組みは2018年から始まっている。構想段階を経て実現段階でコロナ禍に突入した。「JAL SMART AIRPORT」として推進していたことが、コロナ禍とマッチし、より具体的な感染症対策を盛り込んでスタートした。スマートエアポートとは、国土交通省航空局の文書によると、「先端技術の活用等により、地方空港も含め、旅客が行う諸手続や空港内外の動線等を抜本的に革新し、空路の利用に係る一気通貫での円滑化等を通じた旅客満足度の向上を図る。」と書かれている。
空港において旅客の行動は、預け入れ手荷物のある人、あるいはカウンターで手続きが必要な場合は、必ずチェックインカウンターに出向く必要がある。自動チェックイン機を使うにしても、画面に「触れる」行為は避けられないものだと思われていたが、これを非接触で対応できるようにした。
ただ、JALの手法は利用者に喜ばれはするが、直接収益化に結びつくものではない。顧客満足度向上による将来の利用者増加を期待する種まきの状況だと言える。
【次ページ】JALに聞く「JAL SMART AIRPORT」構想
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