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- 2025/02/17 掲載
なぜJR沿線と“街の魅力”が違う? 東急電鉄「人を集める沿線づくり」が凄すぎるワケ
連載:小林拓矢の鉄道トレンド最前線
鉄道各社が真似したがる…東急の経営とは?
経営多角化を進める鉄道会社は多いが、東急ほど事業多角化に成功している鉄道会社はほかにない。同社は、ある要素を経営資源として複数の事業を組み合わせ、優れた企業活動と沿線環境の充実をなしとげており、これが他社にない強みを生み出している。そんな東急の経営は、国有鉄道(国が所有・経営する鉄道)が分割・民営化に向かう際の議論にも大きな影響を与えている。当時、「国鉄が民営化されJRとなれば、東急など私鉄各社がやっているような多角化経営ができるようになり、企業としての収益力が高まるのではないか」といった話すら出ていた。
実際に、民営化後のJRは多角化経営を進めているが、私鉄ほど事業が多岐にわたるものにはならず、不動産・ホテルや商業施設の運営などがメインとなっている。JRになってから38年と国鉄時代から長い年月が経っても多角化経営は板についていないのだ。
それでは、私鉄各社やJRが真似しようとしてきた東急の多角化経営とは、どのようなものなのか。
便利だからじゃない? 東急沿線に人が集まってくる理由
東急グループは、沿線開発を続ける一方で、鉄道事業のサービスはトップレベルであり、つい先日には通学定期券の値下げも発表している。こうして「選ばれる沿線」を目指すというのは、東急に限らず多くの関東圏私鉄が採用している経営戦略でもある。鉄道事業を中心に、良い生活環境をつくり出し、そこに長きにわたって暮らしてもらう。この戦略は、特に東京の西側を走る私鉄では採用され続けている戦略なのだ。その中でも、最も成果を出しているのが、東急グループということになる。
単に鉄道を走らせ、宅地開発をし、生活サービス施設を提供していれば良いというものではない。その中心軸となるものを持たないと、単なる便利な沿線になる。
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先日、そうした同社の強みを象徴するような展示会「東急 暮らしと街の文化──100年の時を拓く」が開催されていた。この展覧会では、東急グループの歴史を振り返りつつ、東急の沿線開発や文化事業、沿線に暮らしていた芸術家などを紹介していた。ここからも、東急グループ100年の歴史において、鉄道事業と沿線開発の軸に「文化」が存在していることが示されていた。
それでは、具体的にどのような施設を作り、どのような街づくりをしているのか。 【次ページ】JR沿線とは何が違う? 東急の「沿線づくり」の“ある特徴”
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