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- 2024/08/06 掲載
JRの「えきねっと」と「エクスプレス予約」は何が違う? 本当に「使いにくい」のか?
連載:小林拓矢の鉄道トレンド最前線
新幹線のネット予約システムの「圧倒的な差」
出張や旅行などに頻繁に出かける人は、新幹線や宿泊先をネットで予約することも多いだろう。その際に、ネット予約のシステムを使ってみて、使い勝手の違いや、その良し悪しを感じる人もいると思われる。新幹線のネット予約システムは、大きく分けて2つ。JR東日本の「えきねっと」と、JR東海の「エクスプレス予約」だ。前者は東北・北陸・上越新幹線が中心であり、後者は東海道・山陽・九州新幹線を対象とする。
その違いは、JR東日本とJR東海の経営戦略の違いが背景となっており、サービスを提供する側の考え方がどう異なるかを示しているものである。
ではまず、「使いにくい」と言われるわりにいろいろとできる、「えきねっと」について考えてみよう。
あらゆるチケットレスに対応する「えきねっと」
「えきねっと」は使いにくいと言われている。それゆえ、JR東日本の「みどりの窓口」には長い列ができ、2024年の夏には、駅によって「みどりの窓口」を復活、あるいは増設する駅も出ることになった。新幹線のチケットレスについては、スマホが普及する前のフィーチャーフォンだった時代に、すでに「モバイルSuica特急券」という形で導入が進んでいた。当初は、「えきねっと」と別の予約システムを使用しており、東北方面、信越方面への新幹線のチケットレスサービスとして、モバイルSuicaと一体になったサービスを提供していた。
しかしこのサービスは、在来線の列車との乗り継ぎは考慮せず、新幹線のみを対象とするサービスだった。新幹線から降りて在来線に乗り換えようとすると、きっぷを買わなくてはならない、しかもそのエリアでは交通系ICカードが使用できない、ということはよく見られた。
たとえば、新青森までチケットレスで行っても、その先青森まで行くにはきっぷを買わなくてはならない、という冗談のような状況があった(現在は解消されている)。
スマホの普及の際に、これが難題になったのだ。日本ではAndroidスマホを国内メーカーが作るようになり、それらのメーカーがスマホにSuicaを搭載したものの、国産Androidスマホはあまりにも性能や操作性が悪く、多くの人がiPhoneを使用するようになった。
しかし、iPhoneは長らくSuicaに対応しようとはしなかったため、カード式のSuicaが長い間使用されることになり、それを使用したチケットレスサービスも近年まで出てこなかったのである。
「えきねっと」と「モバイルSuica特急券」の併存、さらにはiPhoneが人気という事情から、JR東日本の新幹線では大きくチケットレスサービスが進むことはなかった。
大抵の場合は、「えきねっと」で予約して指定席券売機で発券する、という手順を踏んでいた人が多かったと考えられる。
2016年10月にiPhoneにSuicaが搭載されたものの、併存状態は続き、2020年3月に「新幹線eチケットサービス」が登場したことで、新幹線のチケットレスサービスは一本化された。
「えきねっと」は、さまざまに使えるサービスである。紙の特急券の予約もできれば、新幹線のチケットレスサービスの予約もできる。さらには、在来線特急のチケットレスサービスにも対応している。
JR東日本が提供するこのサービスは、JR北海道も全面的に導入し、さらにはJR西日本の北陸新幹線区間でも使えるようになっている。
Webサービスとスマホのアプリでは、提供する内容が異なっている。Webサービスでは、「えきねっと」のすべての機能が使用できる。一方で、スマホのアプリでは、チケットレスサービスの予約に特化している。
新幹線のチケットレスサービスでは乗車券と特急券などを一体として提供し、在来線特急のチケットレスサービスでは乗車券は手持ちのSuicaで、特急券はチケットレスでという設計になっている。 【次ページ】「えきねっと」と「エクスプレス予約」、選ぶならどっち?
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