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- 2024/05/27 掲載
JR・私鉄・地下鉄各社が「ポイ活」を進めるワケ、“使いたくなる”鉄道サービスとは
連載:小林拓矢の鉄道トレンド最前線
私鉄は「囲い込み」ビジネスモデル、対するJRは?
以前は家電量販店などに限られていたポイントサービスは、キャッシュレス社会の進展に伴い、さまざまなサービスで普及していった。クレジットカードのポイントサービスが共通ポイントと結びつく傾向が強くなる中、鉄道会社は交通系ICカードにリンクしたクレジットカードのサービス、そしてそのポイントサービスを強化し、自社のビジネスに「囲い込み」をする傾向がより一層強くなっていった。
生活の多くを鉄道会社グループ企業で賄えるようにしているというのは、私鉄沿線住民にとっては日常的に目にするものである。
そういった諸サービスの連携に、クレジットカードというのは相性がいい。どこに行っても、同じ鉄道会社のポイントが貯まる仕組みになっている。交通系ICカードが登場する前から、私鉄では自系列のクレジットカードのみで定期券が買えるようになっており、クレジットカードによる顧客の「囲い込み」を意識していた。
しかしJRは、当初は「囲い込み」を意識していなかった。
もちろん、国鉄時代から「みどりの窓口」で使えるクレジットカードはあった。JR各社になってから、各社のクレジットカードももちろんできたが、メインの用途は鉄道のきっぷの購入、それも特急券や定期券などの比較的高額なものを購入することを意識するというものだった。
交通系ICカード以前は、前払い式の磁気式乗車カードが都市圏JR、都市圏私鉄・地下鉄、バスなどでばらばらに提供されており、全国共通で利用することができなかった。しかも、それらは交通機関でしか使用できないものだったのだ。
さらに、こうした磁気式の乗車カードは、現金での購入が基本となっており、キャッシュレスとは相性が悪かった。
そのため、JR各社は非鉄道事業に力を入れ始めたものの、鉄道事業と非鉄道事業のシナジーを何によって作り出すかを模索していた。
そこに現れたのは「Suica」をはじめとする交通系ICカードだ。交通系ICカードとクレジットカード、ポイントサービスがリンクすることを各社が戦略として採用し、鉄道会社が戦略的に自社サービスへのロイヤリティを高めようとしている。
「JRE POINT」がJR東日本のサービスを串刺しに
JRはもともと国鉄だった経緯から、鉄道以外のサービスを民営化以来模索し続けてきた。中でも非鉄道事業に積極的にチャレンジしているのが、JR東日本だ。その非鉄道事業で共通して使えるのはSuicaであり、ポイントは「JRE POINT」である。ビューカードからモバイルSuicaにチャージすれば、還元率1.5%。そのモバイルSuicaで列車に乗れば、乗車距離に応じたポイントが付与される。
駅構内のサービスでは、自動販売機だと100円で1ポイント、有人店舗だと200円で1ポイントが基本となっている。Suicaを使用すればポイントが貯まるところもあれば、「JRE POINT」のアプリでバーコードを表示してポイントを貯めることも可能だ。
以前は複数あったJR東日本のポイントは、現在では「JRE POINT」にほぼ一元化され、より貯めやすくなっている。また、ビューカードの利用や「えきねっと」の利用でもこのポイントは貯められる。
定期券、新幹線代など高額なものを利用することでポイントを貯めることができ、Suicaエリアは広い(特に東京圏)ため、長距離の在来線利用での乗車ポイントは魔力のようなものになっている。この場合、特急券はチケットレス特急券を使用することになる。
また、新しくサービスを開始する「JRE BANK」でもこのポイントを貯めることができる。
こういった構造があるため、「JRE POINT」はものすごく貯まりやすいものになっている。乗車距離、頻繁に利用するサービス、駅弁などのちょっと高いもの、商業施設での利用など、貯める機会は多い。鉄道事業と非鉄道事業を一体化するのが、JR東日本のポイントサービスである。
では、私鉄ではどういった戦略をとっているのだろうか? 【次ページ】「経済圏」を築いた私鉄系ポイントサービスの躍進
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