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- 2024/12/11 掲載
なぜJR東日本は勝てない? 最強の鉄道会社「JR東海」の利益率が高い“納得の理由”
連載:小林拓矢の鉄道トレンド最前線
規模最大のJR東日本が生み出す「巨大な富」
首都東京の公共交通の中心となり、東日本全域に7,302.2kmの営業キロ(運行距離)を持つJR東日本。従業員は単独で39,843人、グループ全体で68,769人を誇る巨大企業だ。JRの中のJRとして、鉄道業界に君臨する。山手線や中央線といった通勤電車、東北新幹線などを中心とする高速鉄道を中心としながらも、高輪ゲートウェイ駅周辺の再開発に代表されるような不動産事業を中心とする生活サービス事業、そして日本のキャッシュレス社会を牽引するSuica事業など、鉄道を中心とするさまざまなエリアで東日本エリアの人々の生活に欠かせない企業となっている。
2024年3月期の売上高は単独で1兆9,872億9,800万円、連結で2兆7,301億1,800万円であり、営業利益は単独で2,538億100万円、連結で3,451億6,100万円となっている。鉄道とさまざまな事業を合わせて「稼ぐ力」があり、巨大な富を生み出している。
直近では、2026年3月に、初乗り運賃を10円値上げするといった運賃改定を国に申請したと発表されたが、これも同社の売上を左右する話題として注目されている。
企業の市場からの評価は、株式の時価総額に現れる。時価総額はおよそ3兆2,710億円。しかしこれでも、「利益を出す力」という点においては、ある会社に劣る。それが、「稼ぐ力」「儲ける力」で最強のJR東海だ。
「儲ける力」業界トップ、JR東海の売上構造
鉄道業界の中で、JR東海はJR東日本に次ぐ時価総額を誇っている。時価総額は3兆1,270億円。少し前まで、JR東日本を超える時価総額を誇っていた。営業キロは1,982.0km。JR東日本よりだいぶ短い。従業員は単独で1万8514人、連結で2万9282人。2024年3月期の売上高は単独で1兆4,173億8200万円、連結で1兆7,104億700万円であり、自社の事業で売上を出している。営業利益は単独で5,663億400万円、連結で6,073億8,100万円となっている。
JR東日本に比べてJR東海のほうが、本体で利益を出していることが分かるだろう。
JR東海の中心事業は、東海道新幹線である。そのほかに名古屋エリアを中心とする通勤輸送となっている。不動産事業では、名古屋駅周辺の開発事業に積極的で、東京や大阪でも駅周辺の不動産開発に力を入れている。
従業員をセグメント別で見てみよう。連結では、運輸業1万9313人、流通業2628人、不動産業612人、その他が6729人。およそ66%が運輸業に従事している。
単独では、運輸業1万8414人、不動産業100人。99.5%が運輸業で働いている。
類似のビジネスモデルのJR東海と東京メトロを比較
鉄道中心のビジネスモデルを採用している(というより、成立の経緯や立地から鉄道中心しかありえない)鉄道会社に、東京メトロがある。2024年3月の有価証券報告書を見ると、働く人は、単独で9551人、連結で1万1390人。売上高は単独で3,704億2,000万円、連結で3,892億6,700万円。営業利益は単独で708億8,900万円、連結で763億5,900万円。鉄道で利益をかなり生んでいると分かる。
従業員をセグメント別で見てみる。連結で運輸業1万435人、不動産事業150人、流通・広告事業490人、その他315人。およそ91.6%が運輸業で働いている。単独では、運輸業9431人、不動産事業65人、流通・広告事業53人、その他2人。98.7%の人が運輸業で働く。
東京メトロとJR東海は、「鉄道で稼ぐ・儲ける」というところが共通しているのだ。そこがJR東日本との大きな違いである。
ちなみにJR東日本は、連結では運輸事業5万2590人、76.5%であり、単独では3万9198人、98.4%。JR東海よりも運輸事業従事者の割合が少ない。 【次ページ】JR東海の力の源泉「鉄道事業」は他社と何が違う?
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