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JR東日本(東日本旅客鉄道)のポイントサービスである「JRE POINT」が着実に進化し続けている。「駅ビルポイント」や「Suicaポイント」、「えきねっとポイント」などとの共通化が進み、2021年6月にはポイント統合が完了した。輸送サービスと生活サービスとITサービスを掛け合わせることで新たな価値を創造し、「JRE POINT」をベースとした生活圏の構築を進めているのだ。これまでの「JRE POINT」の道のりと今後の戦略について、東日本旅客鉄道 MaaS・Suica推進本部決済事業部門長の今田幸宏氏に話を聞いた。
提供ポイントサービスの統合、難しかった点とは
もともとJR東日本では、サービスや駅ビルごとに24種類のポイントサービスを持っていました。1つの企業としてはあり得ないような数ですが、駅ビルごとの生い立ちの違いもあり、「アトレ」や「グランデュオ」など、駅ビルのブランドごとのカードが存在しているという状況でした。これらのサービスを統合していこうということから、新たにポイントサービス「JRE POINT」が誕生しました。
「JRE POINT」への統合は、大きく分けて3段階となります。まず第1段階として2016年2月に「JRE POINT会員カード」をスタートし、「駅ビルポイント」との共通化を進めました。
第2段階では2017年12月から「Suicaポイント」、2018年6月からJR東日本グループのクレジットカード「ビューカード」で貯まる「ビューサンクスポイント」との共通化を進め、第3段階として2021年6月に新幹線や特急列車の指定券予約などができるネットサービス「えきねっと」で貯まる「えきねっとポイント」との共通化を行い、当初から計画していたポイント統合が完了しました。
第1段階の「駅ビルポイント」の共通化は、多くの課題を解消しながらの作業となりました。「駅ビルポイント」はそれぞれ長い歴史があり、各駅ビルからすれば会員カードに紐づくお客さまは「自分たちのお客さま」という意識が強くありました。そのため、「JRE POINTマーク」は共通しているものの、共通化にあたって発行されたカードは駅ビルによって色の違うものになりました。
それまではその駅ビルで使えるカードが1種類しかなかったのが、いきなり対応しなければならないカードの種類が増えたわけで、駅ビルテナントの店員のみなさんにご苦労をかけた部分もあったと思います。そこで統合されたカードの一覧を各駅ビルの社員に配布する、といった対応を取りました。
第3段階の「えきねっとポイント」との共通化を実現することで、鉄道会社として会員のみなさんが最も望んでいたサービスの提供にたどりつけたと考えています。ただしまだ課題はたくさんある状態です。「JRE POINT」「えきねっと」はそれぞれ会員になっていただかなければならないほか、最終的には「Suica」との紐づけをしていただかなければいけないという点が課題だと考えています。
さらなる会員拡大に向けた課題とは?
下の表では「JRE POINT会員」は約1248万人とありますが、2022年1月末の時点で約1257万人の方が登録しています。「ビューカード」は約550万人前後、「Suica」は無記名式もあるため、正確な登録者の人数は把握できませんが、発行枚数は8900万枚です。
「Suica」「ポイントカード」「ビューカード」といった複数の媒体を「JRE POINT」の口座に紐づけることによって、JR東日本グループのサービスをトータルで利用することが可能になります。そのためにはそれぞれの会員をキーとなる「Suica」に紐づけていく必要があります。また、目指しているのは「Suicaカード」の会員から「モバイル会員」への移行です。
「Suica」はプリペイド型のサービスであるため、チャージをしなければ、電車にも乗れないし買い物もできません。エキナカATMや大手コンビニATMなど、チャージ拠点は増えていますが、「モバイルSuica」であれば、必要な時に必要なだけ入金することが可能になります。このメリットが大きいと考えています。
いかに「モバイルSuica」への移行を促進するかが、最大の課題と言っても良いでしょう。そのため、「モバイルSuica」を使用すると、「Suicaカード」の4倍のポイントが付与されるなど、ポイントサービスを活用しながら、「モバイルSuica」へのシフトを目指しています。
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