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菅政権が地方銀行の再編を打ち出したことを受けて、経営統合など合理化を探る動きが再び活発になっている。地銀は今の半分に減らないと生き残れないとの厳しい指摘もあり、再編は必至と言って良い。地方銀行が生き残るためには、大手グループの傘下に入るか、地域ナンバーワンを目指すか、あるいは収益源を多角化するといった戦略の転換が求められる。前回の記事では、地銀が置かれている状況についてマクロ的な視点で分析したが、今回は地域ごとの具体的な動きについて探ってみたい。
【北海道】注目は「北海道銀行×北陸銀行」の効果
北海道では北洋銀行がシェアでトップを走っており、北海道銀行がこれを追う展開となっている。以前は北海道銀行が北海道における地銀ナンバーワンだったが、1998年に都市銀行の北海道拓殖銀行(拓銀)が経営破綻し、拓銀の顧客基盤は北洋銀行が引き継ぐことになった。
北洋銀行は第二地銀だが、拓銀の消滅によって北海道銀行を抜いて道内トップ・シェアに躍り出た。北洋銀行が獲得している預金額は北海道銀行の1.8倍に達するが、拓銀の譲渡を受けて急拡大したという経緯もあり、収益性では北海道銀行の方が上回っている。
北海道銀行は規模拡大を図るため、富山県を地盤とする北陸銀行と経営統合を行い、ほくほくフィナンシャルグループを設立した。両行を合算した資産規模は北洋銀行を大きく上回るが、北海道と北陸という距離の離れた銀行の経営統合は珍しい。
北洋銀行が規模を生かして道内シェアを拡大していくのか、遠隔地の統合とはいえ、規模と収益力で勝る北海道銀行が業績を伸ばすのか注目される。もっとも、北海道は面積が広く、各都市では信金など地域金融機関がそれなりのシェアを確保しているので、道内全域で集約化が進むとは限らない。この点において、北海道と他県は状況が少々異なっている。
【東北】注目は「青森銀行×みちのく銀行」の行方
東北地方で注目されているのは青森県である。同県はトップを走る青森銀行をみちのく銀行が追うという図式だったが、両行が経営統合を検討していると報道された。両行は「検討している事実ない」として統合について否定しているが、両行が統合すれば県内のシェアは7割を超える。独占禁止法との関係があるので特例法の適用など実現は容易ではないものの、統合のメリットは大きく、水面下はで協議が継続している可能性もある。
宮城県は七十七銀行が圧倒的なシェアを確保しており、他行を大きく引き離している。こうした中、仙台市を地盤とする仙台銀行は山形市のきらやか銀行と経営統合を行い、2012年に、じもとホールディングスを設立した。
ただ、仙台銀行の資産規模は七十七銀行の約8分の1、きらやか銀行は同じ山形市を地盤とする山形銀行の約半分にとどまっている。隣県とはいえ、宮城と山形の経済圏はそれほど重なっていないので、競合と対抗するにはさらに規模を拡大する必要があるだろう。
ちなみに、じもとホールディングスはネット金融大手で「第4のメガバンク構想」を掲げるSBIホールディングスとの資本提携が報道されている。
福島県では、県内全域に展開する東邦銀行がシェア1位だが、福島市を拠点とする福島銀行と郡山市が地盤の大東銀行が相次いでSBIの資本参加を受けた。だがSBIのメガバンク構想への参画を表明しているのは福島銀行だけで、大東銀行は単なる資本参加にとどまっている。福島の地銀各行は収益力が地銀各行の平均値を大きく下回っており、今度、どのような形で収益を拡大できるのか注目される。
秋田は秋田銀行のシェアが高く、山形は山形銀行がトップである。秋田の北都銀行と山形の荘内銀行は隣県で経営統合し、フィデアホールディングスを設立したが、東北の中心地である仙台進出を念頭に、両行が拠点としていない仙台市に本社を構えた。
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