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  • 2010/09/13 掲載

【対談インタビュー】CIOに聞く情報システム部門の自己改革<第2回>積水化学工業 寺嶋一郎氏

CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第2回は、積水化学工業 コーポレート 情報システムグループ長 寺嶋一郎氏に話をうかがった。
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自社開発でコストパフォーマンスを高める


 積水化学工業のコーポレート情報システムグループは、本社の情報システム部門で、インフラの構築維持や、グループのITガバナンス確立を担っている。

 積水化学工業の情報システムの特徴として、「自社開発」があげられる。たとえば、国内関係会社を結ぶネットワークシステムと情報基盤の開発では、メール、グループウェア、ポータルのすべてを、オープンソースで自社開発した。基幹系再構築でも、パッケージは用いず、旧システムのロジックを解析しながら、オープン化を実現した。自社開発の狙いは、コストパフォーマンスの追求と、本当に使われるシステムの構築である。

 実際、積水化学工業が実施したベンチマークでは、類似企業と比較して、コストパフォーマンスは高い。上記情報基盤は、朝一番にPCを開いて、メール確認、会社からの重要情報の確認、日常業務処理を、流れに沿ってストレスなく推進でき、稼働率は高い。

 システムは、作り方一つで、コストが大きく変わってしまう。寺嶋氏は、若い頃に人工知能を応用したシステム開発を目指したグループ内ベンチャー企業に在籍し、そのことを痛感したのだという。そこで、コストパフォーマンスの高いシステムを作り上げ、さらにコストパフォーマンスを向上し続けるために、自社開発を重視しているのである。

 本当に使われるシステムについても、同じことが言える。パッケージの機能で、本当に使われているものは、一部でしかない。本当に使われるシステムを作るには、徹底的に考えることが必要だ。だから、自社で作る。

 もちろん、最先端の技術やサービスをウォッチし、使えるものは取り入れている。ただし、本当に自社開発よりもコストパフォーマンスが高く、またリスクがコントロールできるものでなければ、安易に採用することはしないのである。

優秀なITアーキテクトを育てる

 重要な仕事を、安易にベンダーに投げたりパッケージに頼ったりせず、自社開発を進め、コストパフォーマンスを高め続けるには、優秀なITアーキテクトの育成が必須となる。積水化学工業では、良いプログラムを書かなければならない仕事、高度なITアーキテクチャを考えざるを得ない仕事を社員に任せる。つまり、自分のレベルを上げなければならない境遇に置くのだ。こうすることで、先輩のスキルを盗む、日々勉強するという風土を形成している。その上で、優秀な人材を選んで、ITアーキテクトへと育成していくのである。

 また、特に保守のような一般的にモチベーションを高めることが難しい仕事で、継続的にコストパフォーマンスを向上し続けるには、社員のモチベーションの維持向上が欠かせない。そこで積水化学工業では、保守を担うシステム子会社に、寺嶋氏が過去に在籍していたAI開発ベンチャー企業を統合させることで、ベンチャー企業の積極性を取り入れ、継続的なパフォーマンス向上策を提案・実現し続ける風土を作り上げている。寺嶋氏は、今でも情報システム子会社の経営幹部の一人として、当該子会社の経営をリードしている。これは、実践を担う情報システム子会社のスキルやモチベーションを高く維持しなければ、本社情報システムのパフォーマンスは決して高まらないからだ。

システム部門の存在価値の追求が重要

 自社開発が、いつでも常に正しいというわけではない。現に積水化学工業でも、新技術の採用も進めている。しかし自社開発にこだわることで、社内の強みに磨きをかけることができる。積水化学工業の場合、それはコストパフォーマンスの追求と、本当に使われるシステムの構築だ。

 このように、重要領域の自社開発を進め、継続的に強みに磨きをかけることは、容易なことではない。魅力的な新しい技術やサービスが、次から次へと出てくる。経営者も、それらをなぜ使わないのかと問うだろう。新技術をあえて採用しない場合、社員のスキルやモチベーションを高く維持することに苦労もあるだろう。それでも、積水化学工業が自社開発を続けられるのは、情報システム部門の存在価値を追求してきたからだ。

 パッケージやサービスを、右から左に手配する「手配師」では、部門の存在価値はない。では、情報システム部門の存在価値は何か。これを徹底的に追求した結果として、高いパフォーマンスで、本当に使われるシステムを開発し、パフォーマンスを向上し続けることを、自分たちの価値と定めた。このような、存在価値の追求があったからこそ、自社開発すべきところは徹底してこれを続けていく執着心を維持することができるのだ。

 では、次ページより、寺嶋氏との対談インタビューの全体を紹介しよう。

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