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- 2017/07/13 掲載
雇用の未来を占う「マッキンゼー報告」から何が読み解けるか 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(88)
雇用の将来像を考えるマッキンゼー報告
技術体系の転換期には、それまで当たり前だった仕事が不要になるのは避けようがない。とりわけ、多目的技術のITは革新の影響が広範囲に及ぶため、さまざまな領域で「技術との競争」が生じ、雇用が奪われるとの議論が盛んだ。技術革新は、生産性と経済成長、効率性、安全性、利便性を確実に高める一方で、雇用、技能、賃金そして「労働の本質」について難しい問いを投げかけている、との問題意識から、さまざまな動向を読み解くための基盤を提供するのが目的だ。
その内容は、第1に、雇用をめぐるグローバルな現状認識、第2に、自動化など技術が雇用に与える影響、第3に、デジタル化の課題と可能性で、全11項目にとりまとめられている。このレポートを参考に、まず今回は、雇用、賃金、技能に関する現状を概観してみよう。
職場で求められるスキルは学力だけではない
その要因の一つは、教育にあるといえそうだ。不稼働労働のうち、失業は若年層に顕著な問題だ(他方、過少雇用は日本も含めて女性に顕著な課題)。マッキンゼーの調査では、エントリーレベルの職が埋まらない理由として、採用企業の4割が能力の欠如を挙げている。この割合は、新卒者では6割に達する。
問題になるのは、科学、技術、工学、数学などいわゆるSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育だけでなく、コミュニケーション、チームワーク、時間厳守といったソフトなスキルだと指摘されている。
前回の連載で触れたように、職場で求められるのは、正解を速く見つけるといった学力だけではなく、分業を担う一員として、さまざまな相手とかかわりながら、意思疎通したり、配慮したりする「社会的知性」ということなのだろう。
【次ページ】これから求められる人材の資質は何か
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