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  • 2016/06/17 掲載

インド現地を見てわかった!クラウド活用で「行政の可視化」はこんなにも進んでいる 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(75)

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インドのバンガロールでITを活用して行政手続きの透明性と市民参加を推進しているインド社会改革センターを訪問した。非営利団体の同センターが運営するのは、道路工事などの公共事業について、計画立案、予算執行、工事進捗の情報をクラウド上に収集し、ウェブで公開して市民がモニタリングする仕組みだ。クラウドとスマホの普及が可能にしたこの仕組みは、汚職防止とコスト削減の効果をもたらし、アフリカなど他の途上国へのグローバル展開も始まっている。
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バンガロール郊外にあるInternational Tech Park。近代的な建物が数多く並ぶ
(写真:調査チーム撮影)



現地調査でインドの実像に迫る

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 21世紀の情報化で「蛙飛び」型に飛躍しているインドの実像を探るべく、バンガロールとムンバイで現地調査を行った。今回の調査は、インド生産性本部、日本生産性本部および国際IT財団と共同で今年3月に実施したものだ。

 現地では有力IT企業のタタ・コンサルタンシ―・サービシズ(TCS)をはじめとする産業界、ハイテク産業の集積地バンガロールを所管するカルナタカ州政府などの公的機関、工学系の教育と研究で最高峰を誇るインド工科大学(IIT)などの教育機関、ITを活用して市民参加型の社会活動を行う非政府組織(NGO)などを訪問した。

 一連の調査では、インド情報産業の現在に至る歴史と発展の要因、現在の状況と今後の展望、情報産業の基盤となる工学系教育と実践的エンジニアの育成に向けた産学連携、社会的課題の解決に向けた公的機関やNGOの具体的な活動状況について、30名を超える方々から貴重な話を聞くことができた。

 今回は、現地で最も興味深かった訪問先のひとつ、インド社会改革センター(ICST:Indian Center for Social Transformation)の取り組みを報告しよう。

ITはインド憲法の崇高な理念を実現する

 ICSTは、バンガロールで情報化を推進し、行政手続きの透明性と市民参加を推進している非営利団体だ。クラウド技術とスマホの普及を背景に、市民がウェブ上で公共事業等の行政運営をモニタリングする仕組みなど、先駆的なIT利活用が試みられている。

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ICST自体は小さなビルの一角にある

 インド憲法の51A条(j)には、国の発展に向けて「あらゆる個人が手を携えて尽力する」と規定されているが、言語、宗教、民族、所得、教育などさまざまな面で分断と格差が現存するインド社会で、「市民の社会参加」という憲法の崇高な理念を実現することは容易でない。

 ICSTは、まさにこの社会的課題をITの力で解決すべく、2009年に設立された。ITを通じた「多くの市民の目」が行政運営の透明性と効率性を高め、よりよい社会への転換が促されるという信念の下、さまざまな活動を行ってきた。

 インド工科大学マドラス校を卒業後、地元で約40年間にわたり警察行政を中心に公務に携わったSri Kumar会長がRaja Seevan氏ら知人と3人で立ち上げ、地元大学の試験制度を電子化して横行していた不正や過誤の削減に貢献するなどの実績を上げ、ソーシャル・アントレプレナーや政府関係者にも参加の輪が広がっている。

ウェブ上で市民が行政運営をモニタリング

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バンガロール空港のフリーWi-Fiスポット
 特に注目されるのは、地元バンガロール市が行うさまざまな公共事業について、計画の立案、予算の計上と執行、工事の進捗状況を可能な限りクラウド上に情報収集し、ウェブで公開して市民がモニタリングする仕組みだ。

 これは、創設者のSri Kumar氏がかつて警察の官舎建設プロジェクトに責任者として携わった経験から生まれたものだ。同センターが利用するクラウド・コンピュータ上に関連情報を入力し、関心を持つ市民が工事の進捗状況をスマホで撮影してアップしたり、予算の執行状況と工事の進捗状況を照らし合わせたりすることができる。

 だれが、いつ、どのような理由で閲覧するかは、情報をアップロードする側に決定権があり、関係する書類、音声、メール、写真をクラウド上に保存して入力者が閲覧者を制限することも可能だ。

 現在は、バンガロール市とその周辺地域を含めたGreater Bangaloreの198区に所在する455の行政事務所が対象となっている。ICSTは、そこに勤務する約2万人の公務員に対する研修のほか、地元大学から多くの学生をインターンとして募り、技術のみならずプロジェクト運営などの実地教育も行っている。

【次ページ】透明性の向上で汚職防止とコスト削減の効果
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