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  • 2014/12/26 掲載

それでも「ふるさと納税」が有意義な理由:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(58)

税制変更でさらに使いやすく

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地域経済の再生が叫ばれる中、ネットの威力が地域経済活性化に上手く機能している例として「ふるさと納税」が関心を集めている。総務省の資料では、2012年に利用した人は2008年のおよそ3.2倍にまで拡大した。政府も、地方創生の目玉として、控除上限の倍増や手続きの簡素化を2015年度の税制大綱に盛り込む方針だ。今回はふるさと納税の意義と仕組み、ネットの役割について考えてみよう。

特典目当ての寄付は邪道か?

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たとえば福岡市に「ふるさと納税」すれば、唐泊恵比須かきなどがお礼として届けられる
(※写真はイメージ)

 ふるさと納税は、出身地や応援したい任意の地方自治体に寄付をすることで、寄付した額が税額控除される制度だ。寄付と税の還付・控除を組み合わせたユニークな仕組みによって、人口減少などで税収減に悩む自治体の格差を是正すべく、2008年から開始された。

 総務省が公表している資料によると、2012年には10万6446人から130億円の寄付が全国の自治体に寄せられており、寄付者の数では2008年の3万3149人から3.2倍、金額では同73億円から1.8倍に拡大している。

 最近特に注目されるようになったのは、寄付した自治体から、地元の特産品がお礼として届けられるケースが増えてきたからだ。所得水準や家族構成などによって、一定の限度額はあるが、実質2,000円の負担で国産ブランドの肉類や海産物、果物など全国津々浦々の名産品が届けられるため、大変な人気となっている。

 一方で、従来はお礼の品が寄付額の3~5割にとどまっていたのに対し、自治体間競争の激化によって、今では7割以上の還元率になるケースも出てくるなど、過熱化を懸念する声も少なくない。還元率が高くなれば、自治体の収入は減ってしまうことになり、そもそも、特典目当ての寄付は打算的で、本来の趣旨を逸脱しているとの指摘も上がっている。

 だが、少し違った角度から評価すると、当初の目的を越えた、いわば副産物として、それ以上の大きな効果を地域経済にもたらしているようだ。

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ふるさと納税の仕組み。たとえば年収700万円の給与所得者が3万円を寄付した場合、所得税額からの還付が5,600円、住民税減額が2万2,400円となり、実質的な負担額は2,000円(3万円-5,600円-2万2,400円)となる。年収だけでなく家族構成などにより還付・控除される金額の上限は異なるので注意が必要だ。

意欲を高める地場の生産者

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 その一つは、寄付へのお礼の品として、小さな村や町の地場産業に需要が生まれ、雇用機会を作り出すという効果だ。寄付を受け入れた全国津々浦々の地元経済に対する効果は大きく、各地で活気あふれる取り組みが盛んになっている。

 たとえば、山間に棚田が広がる中山間地のある町では、寄付者に贈る地元のお米が評判になり、耕作放棄地になりかかっていた休耕田が復活したという話もある。海産物を取り扱う漁協や特産品を扱う零細な生産者も、これに負けじと創意工夫の健全な競争が生まれており、「生産者の意欲の高まりまで含めると経済効果は寄付額の1.5倍はある」と感じる自治体関係者もいるほどだ。

自治体の意識変化も

 地域の行政機関では仕事の進め方にも変化が生まれている。税や財政に関しては、これまで財政課が担当していたが、お礼の特産品をどうするかなど、全国の関心を引き付ける取り組みで農林水産課や商工観光課、地域振興課などと連携し、縦割り行政を越えた取り組みが活発化している。

 単に国から補助金をもらうのであれば、中央の財政当局を相手に交渉すればよいが、この制度では、その背後に控える全国の納税者を一人ひとり意識するという点で、大きな意識変化にもつながる。

 財政による景気回復策といえば、道路工事などの公共事業がイメージされやすいが、ふるさと納税によって、それ以外にも選択肢が大きく広がり、「こういう地域のこんな産業を応援したい」という納税者一人ひとりの思いが直接反映されるという点で、少数の関係者による密室の決定ではなく、透明性の高いプロセスといえるだろう。

【次ページ】モノを贈るだけでない新たな取り組みも登場
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