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- 2017/11/13 掲載
「暗黙の前提」をくつがえす不動産テック、Airbnbが破壊する業界慣行 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(92)
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1980年代までさかのぼれる不動産業界の情報化
不動産業界の情報化といえば、OA(オフィス・オートメーション)化に対応した「インテリジェントビル」など、通信自由化と情報化投資に沸いた1980年代までさかのぼることができる。とはいえ、これまでは、施設の情報機能を高度化することや不動産関連ビジネスの業務効率化、あるいは、売買・仲介情報のネット化などが中心だった。
いずれも、不動産業界の「既存の仕組み」を前提に、各機能をデジタル化、ネットワーク化する取り組みである。取引に登場する供給者や需要者の顔触れは従来と同じで、取引慣行も、基本的には変わらないのが「暗黙の前提」だったといえよう。
ところが、現在の不動産テックはこの「暗黙の前提」を大きく揺るがしているようだ。
リアルで物的価値のウェイトが低下
途上国も巻き込んだ「情報化のグローバル化」は、あらゆる産業の垣根を越えて押し寄せる大奔流となり、 至る所で業界地図を塗り替えている。不動産業界も例外ではない。この点を見落として、従来の延長線上で単に不動産業界の情報化が技術的に一段階飛躍したものだと捉えたのでは、不動産テックのインパクトを矮小化してしまう。ポイントは、「動的ネットワーク空間のマネジメント機能」だ。
それを象徴するのがシェアエコノミーの拡大だ。不動産業界に対しては、(1)市場参加者の質と量を著しく変え、(2)需要と供給の両面でフラグメンテーション化(断片化)を促している。
不動産というリアルで物的な資産を扱う業界でありながら、次第に、物的価値のみならず、付随する関連サービスに価値の重心が移り、そこに情報技術をどう生かすかが、競争優位でカギとなるエコシステムが形成されているのだ。
こうした変化の渦中にあっては、従来のビジネスモデルをいったん白紙に戻し、個々の機能をアンバンドリング(棚卸しによる再整理)した上で再コーディネートする能力が求められる。
【次ページ】「提供者」と「慣行」を一新させたシェアエコノミー
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