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  • 2011/07/26 掲載

ダウンサイジング、リストラ、リエンジニアの違いは何か:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(32)

違いを見極めてIT投資を最大化する

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ITの世界では新しいことが次々と生まれている。そのため、IT投資が効果をあげるには、永続的な企業改革が欠かせない。企業改革の実態は多様だが、インフォメーション・エコノミーの枠組みで整理すると、ダウンサイジング、リストラ、リエンジニアの3つに大別できる。それらの違いをしっかり見極めれば、何が成果につながるか、その道筋が見えてくるはずだ。

企業改革の3概念とダウンサイジング

 企業改革はIT投資の活発化とともに注目されるようになったが、その基本概念は大きく3つに整理できる。ダウンサイジングとリストラとリエンジニアだ(図表1)。一般的には、どれも「リストラ(広義)」の一言で済まされることが多く、実際に取り組む場合も、渾然一体となることが多いだろう。だが、IT導入による企業の生産性向上を最大化するには、3つの改革の違いをしっかり見極めることが大切だ。

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図表1 企業改革の概念整理

 まず、ダウンサイジングとは、現状の企業の枠組みや業務の仕組みを保持したまま、単純に事業規模を縮小するという取り組みだ。たとえば、景気後退などで一時的に売上が減少し、操業度が下がって利益が確保できないため、全社的に経費の「一律削減」を行うような場合がこれにあたるだろう。いってみれば、これまでの会社の姿を相似形に縮める策だ。

 こうしたダウンサイジング型の取り組みは、状況変化に伴う一時的、緊急避難的な取り組みとしては充分意味があるが、中長期的あるいは恒常的な対策としては、必ずしも望ましくない。なぜなら、儲かっている分野もそうでない分野も、将来の成長が見込める分野も衰退が懸念される分野も、押しなべて「一律」に縮小させるからだ。これでは、各分野で一定の改善効果を短期的に引き出せても、全社的にみて経営上の資源配分を戦略的に見直し、中長期の視点で新技術導入と創意工夫を組み合わせて、生産性を大胆に向上させるのは難しい。

 同様に、景気が良くなったからといって、メリハリのない単純な事業膨張策を目指すのも好ましくはない。技術体系が一定で、経済や産業の構造があまり変化しない環境ならともかく、現在のように変化の激しいイノベーションの渦中にあって、景気回復で売上が増加し、操業度が上がったからといって、ヒト、モノ、カネを旧態然とした資源配分で相似形に増やしたのでは、企業の体質は変わらず、短期的にはともかく中長期では大きな潮流変化(連載の26回参照)に乗り遅れてしまうからだ。

 これに対して、以下で述べるリストラ(狭義)やリエンジニアは、企業の枠組みや業務の仕組みを根本から変える取り組みだ。

【次ページ】永続的改革のヒントとなる基本概念
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