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- 2024/07/03 掲載
他人事じゃないAIによる「雇用崩壊」、インドで生じている「笑えない懸念」とは
インドが直面し得る「雇用崩壊」
日本においてもこの問題は他人事ではなく、ASEANに日中韓を加えたアジア14カ国の中で、AIに雇用を奪われる割合が最も高いのは日本であるとした試算が今年に入りAMRO(ASEAN+3マクロ経済調査事務局)から公表されるなど、将来的な雇用への影響が懸念されている。
そうした中で注目されているのが、インドのアウトソーシング産業の行方だ。同産業は、インドにおける経済規模が大きいことに加え、生成AIの影響を受けやすい業態であるためである。
CNBCが今年5月に報じたところでは、スウェーデンのフィンテック企業Klarnaが、AIチャットボットによって700人分のカスタマーサービス業務を代替し、4,000万ドルのコスト削減を実現したと明らかにしたことで、フランスのアウトソーシング大手Teleperformanceの株価が大きく下落したという。このTeleperformanceは世界中に50万人の社員を抱えているが、そのうちインドにおける従業員は9万人を占め、最大規模となっている。
Teleperformanceの株価下落は、コールセンター業務がAIに取って代わられるのではないかという投資家の懸念を反映するものだ。ここから世界的なコールセンターアウトソーシングハブとなっているインドの経済や雇用に大きな影響が出るのではないか、と懸念する声が増えているのである。
ITサービスやコンサルティングサービスを手掛けるタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)のクリティバサンCEOは、英フィナンシャル・タイムズの取材で「1年後には、顧客が電話で苦情を伝える前にAIが問題を解決するため、ほとんどのコールセンター業務がなくなるだろう」と指摘。世界銀行や国際通貨基金(IMF)、オックスフォード大学の研究者らも、インドにおけるAIスキルの需要が、AI以外の分野の労働需要を損なっていることを明らかにしている。AI関連の雇用が1つ生まれると、ほかの分野の雇用が複数減少するというわけだ。
AIが「若年層の雇用」を奪う?
Capital Economicsによると、インドのアウトソーシング産業は、同国における全雇用においてわずか0.4%を占めているにすぎないものの、GDPでは6.5%、輸出では25%を担っているという。また、失業者の8割以上を占める若年層の雇用を、アウトソーシング産業が支えているという事実もある。AIによる自動化が進めば、インドのモディ首相に対する雇用創出への圧力が強まるなど、政治的な変化を促す要因になる可能性も指摘されている。ただしCapital Economicsは、アウトソーシング産業がAIによって壊滅的に縮小しても、インド経済全体への影響は限定的だと予想。最悪のシナリオでも、インドの年間GDP成長率を0.8%ポイント押し下げるにとどまる見込みという。 【次ページ】米中より高いインドのAIに関する「ある数字」
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