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- 2016/09/14 掲載
IT大国インドを支える「ボトムアップ型」エンジニア育成術から学ぶべきこと 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(78)
高等教育にも大きな格差
インドの教育制度は、小学校5年、中学校3年、高校2年、上級高校2年と積み上がり、大学の3年と大学院修士課程の2年を経て博士課程へと展開していく。大学などの高等教育機関については、IITやインド経営大学院大学(IIM: Indian Institute of Science)さらにインド科学大学院大学(IIS: Indian Institute of Science)など少数のエリート養成校に加えて、600を超える総合大学、3万を超える単科大学(College)、4千近くの工業校(Polytechnic)からなる膨大な数の学校が存在する 。
そのため、学生の質や教育の内容に大きなバラツキがあり、産業界が求める人材と大学等が輩出するエンジニアとの間には、どうしても能力の面でギャップが生じがちだ。こうした状況の中、エンジニアの育成で教育と産業の接続や連携に熱心に取り組んでいるのが、国際情報技術大学院(International Institute of Information Technology)だ。筆者はそのバンガロール校(IIIT-b)で話を聞いた。
PPP方式で取り組む教育と産業の連携
同大学は、インドの情報産業が急成長したことを受けて、1998年に官民が共同してPublic Private Partnership(PPP)方式で創設した新しいタイプの大学院大学だ。原則として学部を卒業したエンジニアが入学し、修士もしくは博士の学位を取得できる(一部、学部・修士一貫の5年コースも設けられている)。工学教育に専念したカリキュラムで、設立の経緯から産業界とのつながりが深い。実際、授業の編成や改定に際しては、産業界の意見を取り入れたり、寄付講座のような形で講師も含めて一括した授業を導入したりしている。
同大学が目指すのは、米国のシリコンバレーと競い合うような最先端の人材育成というより、ソフトウェア開発等の実務で即戦力となるエンジニアの養成であり、どちらかといえば、職業訓練的な色合いが強いのも特徴だ。
2年間の修士課程は4学期で構成され、第1学期には主にコンピュータ・サイエンスと数学を学び、その後、ソフトウェア・エンジニアリング、データ・サイエンス、ネットワーク、電子システム設計等の科目群から選択して専門能力を磨いていく。
夏休み期間を利用した活動も盛んで、マネジメントやファイナンスを学んだり、その成果をプレゼンテーションしたりして、実務のスキルを身に着ける経験も積まれるようだ。また、インターンとして半年間企業で働く活動も認められており、企業側からプロジェクトを提案してインターン学生を募集する例もあるという。
【次ページ】政府の研究機関が行う社会人研修
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