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  • 2025/03/03 掲載

今ならフリーランスか、正社員か…? 失敗しないITエンジニア採用の最新戦略

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ITエンジニアの採用難が続く中、企業は即戦力となるIT人材の確保に苦戦している。特に、クラウド、AI、データ分析といった高度なスキルを持つ高度デジタル人材の需要が高まり続ける一方で、正社員採用だけでは対応しきれない現実がある。そこで注目されているのが、正社員、派遣、業務委託など、多様な雇用形態を柔軟に活用する「ハイブリッド人材戦略」だ。本稿では、ITエンジニア派遣サービスを展開するラクスパートナーズの営業企画部 部長 漆島 卓弥氏に、エンジニア市場の変化と企業が取るべき最適な人材活用の手法について話を聞いた。
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「正社員一択」はもう限界? ITエンジニア採用の新常識を解説
(Photo/Shutterstock.com)

「フリーランス」と「正社員への回帰」で二極化が進む

 ここ数年、ITエンジニア市場では大きな変化が起きている。2022年の調査では「フリーランスの6割は正社員に戻らない」との結果が報じられた一方で、2024年に入ると「フリーランスから正社員に戻る動きが加速している」という報道もある。これらは一見すると矛盾するように見えるが、実は市場環境の変化が大きく影響している。

 ITエンジニア派遣サービスを展開するラクスパートナーズの営業企画部 部長の漆島 卓弥氏は次のような見解を示している。

「2022年頃はDX推進の拡大とリモートワークの普及により、企業は未経験者やロースキルのエンジニアでも積極的に採用していました。しかし、2023年以降、米国のIT企業を中心としたリストラの影響や、企業のROI(投資対効果)を重視する流れが強まり、エンジニア採用のハードルが上がっているのです」

 特に、ハイスキルエンジニアはフリーランスとしての仕事を維持できるものの、経験が浅いエンジニアにとっては案件獲得の難易度が上がり、正社員としての安定を求める動きが増えているようだ。このように、エンジニア市場では「フリーランスで活躍できるハイスキル層」と「安定を求めて正社員に回帰する層」の二極化が進んでいるのが現状だ。

 では、こうした環境変化の中で企業はどのようにエンジニアを活用していくべきなのか。

ITエンジニア確保はより困難に

 ITエンジニアの不足が叫ばれて久しいが、その状況は依然として改善されていない。むしろ、新たなスキルセットが求められるようになったことで、企業のIT人材確保はますます難しくなっている。

「当社調査からも、6割以上の企業が『ITエンジニアが不足している』と感じていることが明らかになっています。DX推進や新規サービス開発のニーズが高まる一方で、クラウドやAI、データ分析といった専門領域を担える“高度デジタル人材”の供給が追いついていません」(漆島氏)

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6割以上の企業がITエンジニア人材不足を感じている

 IT人材の定義も、従来の「システム運用・開発エンジニア」から、AIやIoTを活用するデータサイエンティスト、さらにビジネスとデジタルの両方を理解し、企業変革を推進できるDX人材へと広がりを見せている。しかし、こうした高度な専門性を持つ人材を、企業が内製で育成するのは容易ではない。そのため、多くの企業が中途採用の強化や、外部リソース(派遣や業務委託)の活用に目を向けているが、採用競争の激化によりコストが高騰し、思うようにIT人材を確保できないケースが増えている。

「高度デジタル人材はそもそもの数が少なく、企業間での取り合いが激化しています。特に、新卒でコンピューターサイエンスを学んだ人材は大手企業に流れる傾向が強く、DXを推進したい企業でもエンジニアの確保には苦戦しています」(漆島氏)

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ラクスパートナーズ
営業企画部 部長
漆島 卓弥氏

 また、職務内容(=ジョブ)に基づく経験やスキルを持つ人材を起用する「ジョブ型雇用」が注目を集める中で、エンジニアの採用にも変化が見られる。企業は職務内容を明確にし、求めるスキルや経験を基準に人材を探しやすくなった一方で、高スキルエンジニアへの報酬水準が上昇する要因にもなっている。

「ジョブ型雇用はエンジニアにとって目新しいものではないかもしれません。もともと専門職としての性質が強く、システム開発という明確な分野に限定されるからです。しかし、企業側はジョブ型を採用することで、どの程度の年収を提示すればエンジニアを確保できるか、よりシビアに考えるようになっています」(漆島氏)

 ただし、若手エンジニアにとってジョブ型の採用は必ずしもメリットばかりではない。仕事はチームで進めるものであり、幅広い経験を積むことで成長する側面もある。そのため、ジョブ型に固定することで、企業がエンジニアに継続的に適した業務を提供し続けられるのかという課題も生じる。

「たとえば、企業が新しいサービスを開発し、エンジニアを採用したとしても、その後の業務が保守・運用中心になってしまうと、エンジニアにとっては成長機会が減ると感じてしまい、転職を考えるきっかけにもなります。特にものづくりを志向するエンジニアにとって、開発環境が限定される状況では転職を選ばざるを得ないケースも増えてしまいます」(漆島氏)

 こうした課題を解決するためには、企業はエンジニアのキャリアパスを見据えた採用戦略を構築するとともに、外部人材の柔軟な活用を積極的に検討することが求められる。

入社後のミスマッチを防ぐ5つの採用マッチング指標

 ITエンジニアの採用市場において、企業と求職者の間でミスマッチが増えている。その主な要因として、採用スピードと業務要件のズレが挙げられる。企業はエンジニア不足の深刻化に伴い、スピーディーに採用を進めたいと考えるが、エンジニア側は「自身のスキルアップにつながる仕事なのか」を慎重に見極めている。短期間の面接や経歴のみで合否を判断すると、実際に入社してから「期待していた業務と違う」といったギャップが生じやすくなるのだ。

 また、エンジニアは自身の市場価値を高めるために転職を繰り返す傾向があり、企業が求める役割を十分果たす前に退職してしまうケースも多い。特にジョブ型雇用を導入していても、職務範囲やキャリアパスが明確でない場合、結果的にミスマッチを生んでしまう。

「企業は、採用時に技術・スキルだけを重視しがちですが、それだけでは不十分です。カルチャーフィットやチームとの協調性、仕事へのモチベーション、そしてエンジニア自身のキャリア成長をどう支援できるのかといった視点が欠かせません」(漆島氏)

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テック、カルチャー、チーム、モチベーション、キャリアの5軸を満たしているかチェックする必要がある

 実際、企業側がエンジニアのパフォーマンスを発揮できる環境を用意できていない場合も少なくない。特に、採用時に「スキルを活かせる仕事がある」と伝えながら、入社後にルーチン業務が中心になってしまうと、エンジニアは成長の機会を求めて早期に退職する可能性が高くなる。

 こうしたミスマッチを防ぐためには、企業側が求める人材像と業務要件をしっかり言語化し、エンジニアに対してどのような環境を提供できるのかを明確に示すことが重要だ。さらに、正社員であってもスキルアップを目的とした転職が頻繁に起こる可能性があることを前提に、契約形態(派遣や業務委託など)を考慮しつつ、柔軟に外部エンジニアをアサインするなど、戦略的な人材活用方針を検討することも必要となる。

最適な人材活用の鍵は「ハイブリッド採用戦略」にあり

 ITエンジニアの採用に関して、従来は「必要なら正社員を採用する」というのが一般的な考え方だったが、現在ではそれだけでは立ち行かなくなっている。そこで注目されているのが、正社員、派遣、業務委託を適切に組み合わせる「ハイブリッド人材活用」というアプローチだ。

「正社員だから安心、派遣だから不安といった区別にはあまり意味がありません。派遣エンジニアであっても、適切なマネジメントがあれば正社員と同等の業務を担うことができますし、業務委託のフリーランスもプロジェクト単位で高度な専門性を発揮できます。重要なのは、企業がどのように適材適所で人材を活用できるかという視点です」(漆島氏)

 このハイブリッド戦略では、以下のような人材区分を組み合わせることで、最適な体制を構築する。

● 正社員(コア人材)
  • 企業のカルチャーを支え、長期的に組織の中核を担う存在
  • 特にセンシティブなデータや経営に関わる業務を任せるケースが多い
  • ただし、変化の激しいIT業界では、長期雇用を前提とするだけではリスクも伴う

● 派遣社員(フレキシブル人材)
  • 一般的には「正社員の補完」という認識が強いが、現実には長期的にチームの一員として活躍するケースも多い(指揮命令権が受け入れ側にあるため)
  • 特定プロジェクトの増員や欠員補充に対応し、企業の人材ニーズに柔軟に応えられる
  • しかし、派遣エンジニアの活用自体が十分に認知されておらず、多くの企業は業務委託を先に検討する傾向がある

● SESなどの業務委託(スポット人材=フリーランスや副業含む)
  • 短期間で専門スキルを発揮し、成果物重視の業務に適した人材
  • 最先端技術を取り入れたり、特定のプロジェクトに集中するために活用される
  • ただし、契約終了後のノウハウ継承やナレッジの社内定着、偽装請負を起こさせない管理体制が課題となる

 こうしたハイブリッドな人材活用を実現するには、企業側のマネジメント能力も問われる。特に「派遣だからセンシティブなデータを扱わせたくない」「業務委託だと企業カルチャーに馴染みにくい」といった固定観念を持つ企業も多いが、実際には契約形態にかかわらず、適切な管理のもとであれば、高度な業務を遂行することは十分に可能だ。

「センシティブな業務だから派遣には任せられないという意識が根強い企業もありますが、それは必ずしも正しいわけではありません。結局のところ、コア人材である正社員であってもミスをする可能性はありますし、経営層であっても判断を誤ることはあります。重要なのは、適材適所で業務を設計し、それぞれの人材の強みを最大限に活かすことです」(漆島氏)

 現在、多くの企業が正社員採用に固執していることで、採用コストの増大や、採用ミスマッチを招いている。一方で、柔軟な人材活用を取り入れた企業では、コストを抑えつつ、高度なスキルを持つ人材を適切に配置することで、より効果的なIT部門の運営を実現している。

 “正社員+α”のハイブリッド人材活用をどう組み合わせるか。この視点が、今後のITエンジニア採用戦略において、より重要になっていくだろう。

ITエンジニア市場の流動性を活かした最適な人材活用を

 これまで述べたように、ITエンジニアの需要が高まり続ける中、企業が長期的にエンジニアを抱え続けることは、現実的に難しいケースも増えている。特に、エンジニアが常に成長を求め、流動性の高い職種であることを考えると、企業側も柔軟な人材活用の仕組みを構築することが求められる。

「企業の中には、エンジニアを長期的に雇用し続けるのが難しいところもあります。大切なのは、必要なタイミングで最適な人材を確保し、成果を上げられる環境を提供することです。そのために、派遣や業務委託といったフレキシブルな人材活用が重要になります」(漆島氏)

 ラクスパートナーズでは、「キャリアハブ」という仕組みを設け、派遣エンジニアが転職を希望する場合にその選択を尊重し、また必要に応じて戻ってくることも歓迎するという柔軟なスタンスを取っている。この仕組みによって、エンジニアが継続的にスキルアップできる環境を提供し、日本全体のDX推進にも貢献していく考えだ。現在、1万名のエンジニア育成を目標に掲げ、すでに1500名以上が活躍している。

 また、ITエンジニア採用市場では、給与の高騰や採用競争の激化が進んでいるが、前述のように必ずしも正社員にこだわる必要はない。企業が柔軟な雇用形態を受け入れ、派遣や業務委託を適切に活用することで、コストを抑えつつ優秀なエンジニアを確保しやすくなるからだ。

「大切なのは雇用形態ではなく、そのエンジニアが成果を出せる環境を整えられるかどうか。この視点を決して忘れてはなりません」(漆島氏)

 今後、企業が優秀なエンジニアを確保するためには、「採用」だけに頼るのではなく、「環境づくり」や「スキルアップの支援」といった視点も不可欠になる。ラクスパートナーズでは、未経験エンジニアの育成に注力しており、即戦力となるIT人材を企業に提供することを強みとしている。

「エンジニア採用を考えている企業は、ぜひ一度、私たちに相談してください。単に人材を提供するのではなく、企業ごとの環境やニーズ(業務内容)、マネジメント状況を踏まえて最適なIT人材を提案し、組織の成長を支援します」(漆島氏)

 ラクスパートナーズのようなエンジニア育成と活用のプロと協業しながら、自社が求めるIT人材像を明確にし、最適な雇用形態を柔軟に取り入れることが、今後のエンジニア採用戦略の鍵となるだろう。

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