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- 2016/12/20 掲載
ホンダも参入!インドネシアのバイク配車「GO-JEK」が凄すぎる理由 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(81)
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もはや単なる配車サービスではなくなっている
「三丁目の夕日」と「バブルヘGO!」が重なるジャカルタの活気
今年8月に新興国の個人消費とネット活用の実態を調査するため、インドネシアの首都ジャカルタを訪問した。現地の印象を一言で表現すると、日本の1960年代(高度成長期)と1980年代(バブル期)が同時進行したような活況といえる。日本の映画に喩えれば、前者は「三丁目の夕日」、後者は「バブルヘGO!」の世界だ。相次ぐ建設投資のラッシュと旺盛な個人消費がそれを象徴している。両時期の日本と異なるのは、ネットとリアルの連携で新たな価値連鎖が生まれている点だ。
インドネシアの一人当たりGDPは3,775ドルで、日本(3万7,244ドル)の10分の1に過ぎない。だが、人口は日本の2倍の2億5千万人で、中国(13億7千万人)、インド(12億6千万人)、アメリカ(3億2千万人)に次ぐ世界4位だ。
そのため、GDP(2016年IMF推計)は9,400億ドルとタイの2倍を超え、市場規模という点では、ASEAN最大の存在感を誇る。成長率をみると、リーマンショック後の2010年以降も、物価の影響を取り除いた実質で年率5.8%、名目では年率12.0%と高成長が続く。その結果、2015年の一人当たりの名目所得は、2005年に比べて3.3倍に増加している。
インドネシアの総固定資本形成(官民合わせた投資総額)は、2010年以降、GDPの34%もの高水準にある。所得水準の向上が旺盛な消費につながり、さらには、活発な建設投資に結びついているようだ。
日本はこの割合が21%でGDPの5分の1程度であり、インドネシア経済における投資の大きさが窺える。もっとも、日本も高度成長を遂げた1960年代は、高速道路や新幹線といったインフラの建設が相次ぎ、この比率は32%と高水準だった。
投資主導は成長途上の新興国に共通する現象なのだ。実際、ジャカルタ市内では至る所で道路や高層ビルの建設工事が行われていた。まさに「三丁目の夕日」の世界だ。ただし、ジャカルタでは高度成長期の日本とはやや異なる様相もみられる。建設投資の増勢に旺盛な個人消費が直接関係していることだ。
インフラより商業施設の建設投資
日本の高度成長期が舞台となった「三丁目の夕日」では、東京タワーの建設に象徴されるインフラ整備が遠景に映し出されていたが、他方で、古くからの地元商店街や百貨店など身近な生活空間で消費と娯楽を楽しむ人々の日常が描かれていた。これに対して、現在のジャカルタは、地元住民が週末や休日を楽しむ消費空間は、大型ショッピングモールに象徴される近代的な商業施設だ。
インドネシアの観光スポットといえば、バリ島やボロブドゥールの仏塔などが有名だが、首都ジャカルタについては、これといった名所がすぐにはピンとこない。現地事情に詳しい関係者は、ジャカルタではショッピングモールを勧めてくれた。
もちろん、独立記念塔のあるムルカデ広場は、市民の憩いの場となっており、日没後の時間を家族や友人たちとのんびり過ごしたり、夜店を楽しんだりする人たちで賑わう。
だが、ショッピングモールを訪れる人波はこれに勝り、旺盛な個人消費に牽引されて、外資系企業も加わった大規模な商業施設の開発が至る所で進められている。
華やかな商業空間と慢性的な交通渋滞
確かに、欧米の高級ブランド品を主体とした富裕層向けのモールもあれば、日本の家電量販店や衣料販売店が入る中間層向けから地場の小店舗が入居する庶民派まで、所得階層別に様々な商業施設が各地区に整備されている(JETRO[2012]参照)。週末ともなると、そこに大勢の人々が押し寄せ、食事や買い物を楽しんでいる。こうした近代的な商業施設に溢れる活気と賑やかさは、「バブルへGO!」で描かれた1980年代後半の日本を彷彿とさせる。
いうまでもなく、経済成長で所得が増えるのは望ましいことだ。だが、困ったことも起きている。地下鉄など基幹交通のインフラ整備が進む前に、人々の旺盛な消費活動が促されたことで、ジャカルタ市内は慢性的な交通渋滞に悩んでいるのだ。
日中の気温の高さや歩道事情の悪さもあって人の移動は制約が多い。移動手段は車かバイクとなるが、慢性的な渋滞により直線距離では5分程度の所も、ひどい時には車で1時間以上かかることさえある。つまり、ここでは「移動」の不自由さが社会的課題なのだ。
【次ページ】配車アプリ+バイク輸送=課題解決
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