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- 2023/11/17 掲載
デジタル革命で「評価急落」の日本、学ぶべき「イノベーション向き」の企業間関係とは 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第164回)
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デジタル化で入れ替わった日米の「長所」と「短所」
ラーニング・バイ・ドゥーイングによる現場主義の技術開発は、改善型のインクリメンタル(漸進的)・イノベーションに適している。一方、断層を伴う新結合型の不連続な技術開発は、創造的破壊をもたらすラディカル(急進的)・イノベーションを創発しやすい。前回解説したように、シリコンバレー型の技術開発は、アナログ時代の1980年代には「小規模な新規事業の乱立」や「技術オリエンテッドによる製造部門・消費者との連携の弱さ」が短所だと指摘されていた。
一方、インクリメンタル・イノベーションは、日本が得意とする技術開発のスタイルでアナログ時代に威力を発揮した。それがジャパン・アズ・ナンバーワンの成功につながり、海外でも高く評価された。
ところが、デジタル化による技術体系の変化で、この短所と長所は正反対に入れ替わった。短所とされていたシリコンバレー型は、独立した各主体が相手にはない専門性を有しつつ、新しい関係の構築に向けてスイッチング=代替取引することが容易だ。
つまり、連載の第36回で解説した連携の経済性を発揮して、まったく新しい財・サービスを次々と創発することを可能にする。それがラディカル・イノベーションの連鎖を誘発し、ニュー・エコノミーの出現へと導いたのだ。
ラディカル・イノベーションで重要な「モジュール構造」
ラディカル・イノベーションで重要なのは、それぞれの企業が自律的な塊として、その内部には高度に専門化された資源が蓄積されている一方、企業と企業をつなぐインターフェースは標準化され互換性が保たれることだ。これがモジュールと言われる構造で、高度に専門化された自律的な内部構造をもつサブシステム(部品)が標準化されたインターフェースによって相互連結が容易にできるシステムだ。
各モジュールが専門性を発揮しながら互いに内部干渉することなく連動し、全体として複雑なシステムを有機的に進行できる仕組みと言える。
モジュール構造と言えば、音響機のステレオ・コンポーネントやパソコンなど、消費者の多様な要望にきめ細かく対応できるという需要面の議論が多い。そこに「技術、イノベーション、組織の境界といった供給面の問題」も射程に入れて論じたのがLanglois & Robertson(1992)の研究だ。 【次ページ】イノベーションが起こりやすい「ある環境」とは?
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