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  • 2024/02/13 掲載

経済効果「20兆円」の衝撃、TSMC熊本工場が日本復活の“第一歩”である明快理由

篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第167回)

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サプライチェーンの信頼できる拠点として、地政学的に日本を再評価する動きが強まっている。1つの象徴は、半導体の世界的なファウンドリーである台湾のTSMCが熊本に新設した初の日本工場だ。第1工場は年内の量産開始に向けて着々と準備が進められている。今月6日には第2工場の増設も正式発表され、先端品の第3工場も検討中のようだ。これが契機となって九州では多くの関連企業が設備投資を計画しており、その波及効果は10年間で20兆円を超えるとされる。今回はシリコンアイランド九州の復活に向けた動きと課題について考えてみよう。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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シリコンアイランド九州の復活に向けた動きを解説する
(Photo/Shutterstock.com)

TSMC熊本工場がいよいよ開所

 前回解説したTSMCによる初の日本工場(熊本県)新設は、着工から1年8カ月のスピードで竣工し、今月24日に開所式が執り行われる予定だ。年内の量産開始に向けて着々と準備が進められている。

 経済産業省商務情報政策局が2023年6月に改訂した「半導体・デジタル産業戦略」では、国内の半導体生産額(半導体関連の売上高)を2020年の5兆円から2030年には15兆円超に拡大する目標が掲げられた。このうち3兆円は九州が担うとされる。

 半導体の需要が今後爆発的に伸びると見込まれるのは、IoTロボット、電気自動車などの産業用途だ。そこでは、高水準の性能と信頼性が求められるため、半導体企業には、ユーザー企業との緊密な連携が欠かせない。

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半導体の需要は今後、IoTやロボット、電気自動車などの分野で増加すると見込まれる
(Photo/Shutterstock.com)

 その点で、九州には産業革命時代の石炭、造船、鉄鋼から今日のカーアイランド九州まで、歴史的な産業集積があり、多くのユーザー企業が立地している。TSMCの熊本進出を機に九州の潜在力を見据えた取り組みが活発化している。

経済効果は10年でなんと「20兆円」

 東京エレクトロン九州、SUMCO、ローム、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングなど多くの半導体関連企業による九州での設備投資がめじろ押しだ。河村・岡野(2024)によると、2030年までに合計72件、総額6兆円以上が計画されている。

 これらの設備投資が九州地域(九州・沖縄および関門海峡を挟んで隣接する山口県)に及ぼす経済波及効果は、10年間で20.1兆円と推計されている。波及効果は、電気機械、一般機械、非鉄金属などの半導体関連部門(10.9兆円)にとどまらず、消費活動が喚起されるサービス業(2.8兆円)まで幅広い(図表1)。

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図表1:九州地域(九州7県および沖縄県、山口県)の半導体関連設備投資の域内波及効果
(出所:河村・岡野(2024)図表5のデータをもとに筆者作成)
【次ページ】なぜ「人材誘致」が重要なのか

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