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  • 2023/08/15 掲載

「日本再起動」の日は近い? AI時代のICTが経済復活に「期待大」と言える理由 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第161回)

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ICT市場の発展と拡大に寄与することを目的に創設されたMM総研大賞の授賞式が7月に開催された。20回目となる今年は、高速大容量・多数同時接続・超低遅延という5Gの特性を生かした技術やそれらに対応したセキュリティなどに加えて、ICTと連動したロボット技術など14の製品とサービスが表彰された。その中で大賞に輝いたメディカロイド社の「hinotoriサージカルロボットシステム」は、日本が得意とする領域の挑戦を象徴しているようだ。今回はMM総研大賞から読み取れる日本再起動の可能性を考えてみよう。
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MM総研大賞に輝いた「hinotoriサージカルロボットシステム」
(写真:つのだよしお/アフロ)

MM総研大賞に見た「日本の可能性」

 本格的なAI時代を迎えつつある中、国際社会を取り巻く環境は、デジタル革命の基盤となった過去約30年間とは様変わりしている。この激変を受けて、「失われた30年」に陥っていた日本に再評価の兆しもみられる。

 その要因は、第1に、「平和の配当」が消滅し価値観を巡る対立が深まりつつあること、第2に、この動きに技術革新が重なりサプライチェーンの「可視化」と「再編」が迫られていること、第3に、デジタル化の新展開で「リアルとの融合」やウェットラボの可能性が生まれていることだ。

 第3点目の「リアルとの融合」に関連して、2023年7月12日に都内で開催されたMM総研大賞2023(審査委員長:村井純慶応義塾大学教授)の授賞式は、AI時代におけるICTと日本の可能性をうかがわせるものだった。

「脱コロナ禍」に向けて動き出した社会

 MM総研大賞は、ICT分野の市場と産業の発展を促す目的で2004年に創設された。こうした継続性のある表彰制度は、過去を跡付けることで、その時々の話題や関心を知ると同時に、通底する潮流も読み取れる。まさに「不易と流行」の宝庫だ。

 筆者は2020年から審査委員を務めているが、この「不易と流行」の知見は、過去を映し出すだけにとどまらず、次の展開に向けて未来を映し出す鏡かもしれないと今年の授賞式で感じた。

 世界がコロナ禍に直面した3年前には、飛沫拡散のシミュレーションで威力を発揮したスパコンの「富岳」、Web会議システムの「Zoom」、人数を見える化した「モバイル空間統計」など社会的課題の解決に深くかかわる製品とサービスが表彰された。

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コロナ禍では「Zoom」など社会問題の解決にかかわる製品・サービスが表彰された
(出典元: Primakov / Shutterstock.com)

 20回目の節目となる今年は、脱コロナ禍に向けて社会が再起動する中で、ネコ型配膳ロボットの「bellaBot」などリアルとバーチャルの相互連携が新境地を切り開いている様子が印象的だった。その象徴が大賞に輝いた「hinotoriサージカルロボットシステム」だ。

手塚プロ「公認」の手術支援ロボットは何がスゴい?

 hinotori サージカルロボットは、国内初の手術支援ロボットとして、2020年8月に製造販売が承認された。開発したのは、産業用ロボットに秀でた川崎重工業と臨床検査機器などを手掛けるシスメックス社が共同出資して2013年に設立されたメディカロイド社だ。

 「人とロボットの共存」をコンセプトに、設立前の2012年から2社による共同研究が進められ、全国の「ゴッドハンド」と呼ばれる名医を訪ね歩いて開発を本格化させた。ロボットの名称は、日本を代表する漫画家で医師免許を持つ故手塚治虫氏の名作『火の鳥』にちなんだものだ。

 川崎重工側でプロジェクトに携わった橋本康彦氏(現メディカロイド社会長)とシスメックス社側で携わった浅野薫氏(同副会長)の2人は、大の手塚治虫ファンとのことで、手塚プロダクションの正式な承諾を得て製品名にされたという。 【次ページ】AIが作る『ブラック・ジャック』新作とは?
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