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- 2022/03/15 掲載
ウクライナ危機が突き付ける「日本の」経済活動と安全保障、検討すべき事案とは 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第144回)
ウクライナ危機の翌日に閣議決定された「経済安全保障法案」
2月24日に始まったロシア軍のウクライナ侵攻で世界に激震が走っている。国連の安全保障理事会で対立の構図が鮮明になる中、G7をはじめとする国際社会はSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication:国際銀行間通信協会)からのロシア排除など経済制裁を強化する姿勢で対抗している。一連の動きからは、経済活動と安全保障がまさに表裏一体であることがわかる。緊迫した国際情勢の中、日本では2月25日に「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」いわゆる「経済安全保障法案」が閣議決定され、第208回通常国会に提出された。その第1条には、同法案の目的が次のように記されている。
2年前から始まっていた経済安全保障の議論
この法案に向けて、政府は2020年4月に国家安全保障局に経済班を設置し、経済分野における国家安全保障上の課題について検討を開始、翌2021年6月の「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる「骨太の方針」に盛り込まれた。そこでは、「基本的価値やルールに基づく国際秩序の下で、同志国との協力の拡大・深化を図りつつ、我が国の自律性の確保・優位性の獲得を実現」すべく「重要技術を特定し、保全・育成する取組を強化するとともに、基幹的な産業を強靭化するため、今後、その具体化と施策の実施を進める」との方針が掲げられた。
当時を振り返ると、本格化する米中の経済摩擦、コロナウィルス感染症の世界的蔓延、世界各地で頻発する自然災害など、さまざまな社会経済情勢が背景に横たわっていた。今回のウクライナ危機が突き付けた国際社会の厳しい現実によって、改めて経済活動と安全保障の重要性が認識されたといえるだろう。
【次ページ】法制上の手当てを講じるべき4分野とICT
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