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1990年代の投資ブームがGAFAを生み出す「経済再生」につながったのはなぜか。それを理解するには、経済における投資の役割を理解しておく必要がある。今回は、この点を踏まえて今起きていることの源流に遡り、「循環と成長」の構造に何が起きたのか、ロング・ブームの本質に迫ろう。
ロング・ブームのけん引役は企業の投資
前回は、今起きていることの源流として、1990年代の米国経済を景気循環論の観点から振り返った。その結果、黄金の1960年代を超えるほどのロング・ブームで過去にみられなかったユニークな特徴が観察された。
このロング・ブームのけん引役となったのが「企業の投資」だ。当時のデータによると、民間企業の設備投資は1992年から2000年まで年平均9%程度の増加が続いた。この間のGDP成長率の約3割が企業投資の寄与によるものだ。
ではなぜ「企業投資」が「経済再生」につながったのだろうか? これを理解するには、経済学の基本的な分析枠組みが役立つ。
三つの主体と三つの市場
経済学は、人と人との社会的関係の中で、どのような資源配分がなされるか、その効率性を考える「選択の科学」といわれる。
自然界ではか弱い存在に過ぎない人類がこれほど豊かに繁栄できたのは、相互に支え合う社会的存在として「無限の欲望」と「限りある資源」の兼ね合いを上手く見つけ出してきたからだ。経済とはこうした営みが織り成す社会模様といえる(連載の
第34回参照)。
その仕組みを大括りに概観すると、「家計」「企業」「政府」という三つの主体が、「財サービス」「労働」「金融」という三つの市場(=舞台)で相互に関わりあう活動に整理できる。
このうち、各経済主体の行動に焦点を当てて、市場の機能を明らかにするのがミクロ経済学、それらを大きく捉えて、経済全体の「動きと均衡」の仕組みを明らかにするのがマクロ経済学だ。
経済分析の基本フレーム
三つの主体は、それぞれ需要と供給の両面で経済活動に関わっている。家計は、需要面では個人消費と住宅投資を行う主体、供給面では労働力を提供する主体だ。一方、企業は、需要面では設備投資を行う主体で、供給面ではさまざまな財・サービスを提供する主体だ。
家計や企業のような民間部門だけでなく、公的部門も経済活動の担い手だ。政府は、需要面では公共投資などの政府支出で、供給面ではさまざまな行政サービスの提供(政策の実施)で、経済活動に深く関与している。
代表的な経済統計のGDP(国内総生産)は、この三つの主体が三つの市場でどれだけ活動したかを集約したマクロ指標だ。
これを需要=支出サイドから捉えると、個人消費、住宅投資、設備投資、政府支出で表される。これに外国との貿易(輸出と輸入)を加えたものが国内総支出(GDE)で、国内総生産(GDP)と同額になる(表1)。
表1:国内総生産と需要項目の関係 |
[供給=生産] |
[需要=支出] |
輸入 |
個人消費 |
国内総生産 (GDP) |
設備投資 |
政府支出 |
輸出 |
GDP(国内総生産)=個人消費+住宅投資+設備投資+政府支出+(輸出-輸入)
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