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- 2014/11/27 掲載
IoT時代のデータドリブン・エコノミー:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(57)
データが価値を生む時代
情報化というと、スマホやタブレットなどハードウェアの動向に関心が向かいがちだが、重要なのはそれらを通じてやり取りされる「データ」であり、その価値を高めることで経済が発展へと導かれる。これは、梅棹忠夫氏が今から約60年前に提唱したことで、今年の『情報通信白書』でも「データが切り拓く未来社会」が取り上げられている。
数年前から「ビッグデータ」が注目されるようになった背景には、スマホの急速な普及で人々が発する「つぶやき」や「位置情報」など多様で膨大なデジタル・データがリアルタイムに生成、流通し、蓄積されるようになったからである。
ビッグデータ、M2MからIoT、IoEへ
多種多様なビッグデータは、石油などの天然資源と同様に価値ある資源となり得る。原油を精製してガソリンを生み出すように、デジタル・データをうまく解析して価値ある情報を引き出せば、富を生み出すことができるのだ。その延長線上で今注目されているのが「Internet of Things(IoT:モノのインターネット)」だ。情報通信技術に加えてセンサーの技術の発達により、人が発する情報だけでなくモノが発する情報も含めて、ありとあらゆる「事柄」をリアルタイムで捉えることが可能な時代を迎えた。ThingsをEverythingに置き換えてIoEと呼ばれることもある。
現在、世界の総人口約70億人に匹敵する数の携帯電話が万遍なく普及している。これに加えて、その約10倍の機器類が次々とつながり始め、ネットワーク上でデータが生成されて流通するようになった。
高価なマシン同士が自動でデータをやり取りするM2Mの枠組みを越えて、あらゆる身近なモノが発する膨大なデータと人の活動からうまれるさまざまなデータとをうまく束ねれば、「価値ある資源」として経済活動に活かせるだろう。
IoTの草分けコマツのKOMTRAX
このシステムでは、車両の位置、オーバーヒートやエンジンオイルの油圧の低下といった車両状態、稼働状況、燃費状況をリアルタイムで知ることができる。適切な点検や部品の交換時期、効率的な配車計画や作業計画、燃費改善等による利用者のコスト削減に貢献できる他、故障原因を推定して迅速に修理することも可能だ。
遠隔操作でエンジンを停止することができるため、機材の不正利用や盗難防止に役立つばかりか、使用状況、保守・点検を的確に把握することで、中古機械の価格を高く維持することにもつながる。さらに、稼働状況を地域ごとに分析して製品の需要動向を予測すれば、生産を調整して販売機会の逸失や無駄な在庫の削減にも活かせる。つまり、さまざまなルートを通じて、経済価値を生み出すのだ。
こうした利用は、建設機械にとどまらず、トンネルや橋梁などのインフラ、工場の生産設備、オフィスやホテルのエレベータなどにも応用が可能であり、生産効率や利便性の向上に加えて、人口が減少する地域の公共インフラを低コストで維持・管理し、事故の防止や防災、防犯に活用できると期待されている。
【次ページ】IoTで何ができるのか
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