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- 2024/01/25 掲載
台湾に半導体で“圧倒的敗北”の九州、ここにきて「反転攻勢」の兆しアリと言えるワケ 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第166回)
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かつては世界シェア“5割超え”の日の丸半導体産業
かつて未来論や文明論で語られていた「情報化社会」が、現実のものとして一般社会の表舞台に登場したのは、1980年代後半のことだ。当時を振り返ると、デジタル化の基盤となる半導体(集積回路)の生産で、日本は世界シェアが5割を超える電子立国だった。そのため、デジタル化が加速すれば、半導体などの電子産業が中核となって順調に経済成長を続けるとの期待が強かった。中でも、大手デバイス・メーカーの工場が集積し、世界シェアの約1割を担っていた九州は「シリコンアイランド」として脚光を浴びていた 。
残念ながら、この期待は見事に裏切られた。その後、先陣を切ってデジタル化の波に乗り経済再生を果たしたのは、日本が追い越したと考えていた米国だ。それと入れ替わるように、日本は「失われた30年」に陥り、両国経済の明暗は逆転した。
世界の景色は「3度変わった」と言えるワケ
英語で世代を意味するgenerationには、タイムスパンで25年から30年の含意がある。現在に至る時間軸に当てはめれば、1990年代が起点となるが、この間に世界の景色は大きく3度変わった。1度目は、ベルリンの壁崩壊(1989年)と旧ソ連解体(1991年)で実現した冷戦終結とそれによる平和の配当だ。米国発のニュー・エコノミーは、こうした国際環境の激変と共振して、今日に至る世界経済の大枠を形作った。
まず、冷戦終結でヒト、モノ、カネなどの経済資源が国防関連から民間のハイテク分野へと大きくシフトした。さらに、企業の効率的な資源配分の舞台は、政治体制の違いを意識することなく、ボーダーレスに広がった。これらが車の両輪となって、世界を駆け抜けたのだ。
この勢いは、やがて2度目の変化をもたらした。2000年代半ばになると、デジタル化の波がグローバルな奔流となって途上国にまで及んだのだ。中国とインドはデジタル化と平和の配当の申し子であり、グローバルサウスの台頭は、この文脈から読み取ることができるだろう。
そして今、世界は3度目の変化の渦中にある。平和の配当が消滅する中で、デジタル化はリアルと融合した新展開を迎えているからだ。この変化は、日本の「失われた30年」と並走してきた世界経済の「両輪」にきしみが生じていることを意味する。 【次ページ】TSMCによる工場新設の意味とは
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