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情報には、「生産的情報」と「消費的情報」がある。ミクロ経済学の応用として発展してきた「情報経済学」が得意とするのは、不確実性を減らす「生産的情報」で、たびたび引き合いに出される「ロスチャイルド家の伝説」は有名な故事だ。今回は、その概念の基礎を解説しながら「情報の価値」について考えてみよう。
不確実性な所得の価値を考える
最近、アフリカのソマリア沖で「海賊」行為が頻発し、国際貿易に欠かせない船舶の運航に支障がでていると報じられている。ハイテク時代の21世紀に、国際社会が「海賊」に悩まされるとは意外だが、遠く離れた異国との貿易には大きな「危険=リスク」がつきものだと再認識させられる。まして歴史を5百年ほど遡る「冒険商人」の時代となると「リスク」の大きさは今とは比べ物にならなかったであろう。それでも、彼らを貿易に駆り立てたのは、船が無事に帰港した際に得られる利益が莫大だったからに他ならない。
こうした冒険商人の話を手がかりに、次のような例で期待効用、リスク、情報の価値を考えてみよう(
図1)。
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・A国の商人X氏は、遠く離れたB国に向けて出港した船が帰港するのを待っている
・その船は、A国で品薄の商品をB国で大量に船積みしてA国に帰ってくる予定
・船が帰港すれば、一隻あたりの積荷で1億円の利益をあげることができる
・ただし、A国とB国の間には嵐や海賊など危険な区域がある
・これまで無事にA国に帰港した船の確率は1/4(4隻のうち3隻は行方不明)
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こうした条件もと、X氏が持つ船荷の権利は、どのような価値があるだろうか。もし、X氏が
前回解説した「危険中立者」であれば、期待値で判断するので、その価値は2千5百万円(=1億円×0.25 + 0円×0.75)と考えて、それ以上の値段であれば、その権利を売却してもいいと判断するだろう。だが、X氏が「危険回避者」であれば、それよりも低い金額、例えば1千万円で売却してもいいと判断するかもしれない。なぜなら、「危険回避者」にとっては、確実に得られる1千万円の方が、どうなるかわからない不確実な期待値の2千5百万円(つまり、75%の確率で0円になるかもしれない1億円)よりも安心で、「効用=満足度」が高いからである。
この点を、X氏の効用関数を特定化して、具体的な計算例で考えてみよう。
・X氏の効用関数(危険回避型)
u = √x = x1/2 ・・・・・・(1) ただし、u:効用、x:所得
X氏の効用関数が仮に上記の(1)式で示されるとすれば、X氏は625万円以上の価格でこの船荷の権利を売却すると考えられる。なぜなら、船荷の権利に対するX氏の期待効用(Eu=効用の期待値=効用の確率加重平均)は下記のとおり2,500という水準(単位は円ではない)になり、それと同水準の効用=満足度が得られる「確実な所得」は、625万円となるからだ。この625万円を「確実性同値額」という。
・X氏の期待効用(Eu:効用の期待値)
Eu = 100,000,0001/2×0.25 + 01/2×0.75
= (10,0002)1/2 ×0.25 + 0
= 10,000×0.25
= 2,500
・確実性同値額(期待効用と同水準の満足度が得られる“確実な所得”)
2,500 = √x = x1/2
x = 6,250,000円
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