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- 2014/10/31 掲載
通信自由化から30年、10年ごとに起きた3つの変化から将来を展望する:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(56)
1980年代の通信自由化は世界的な動き
アメリカでもちょうど同じタイミングで似たような動きがあった。アメリカでは民間企業のAT&Tが通信事業を営んでいたが、当時は巨大な独占企業だったため、分割して他の事業者が自由に参入しやすい競争環境が整備された。
つまり、通信自由化は日本だけでなく、国際的にも共通してみられる動きだったといえる。1980年代の半ばごろは、ビジネス活動でコンピュータ化が進み、そのやり取りで通信ネットワークが重要な役割を担い始めていた。「モシモシ、ハイハイ」の音声電話の時代からデータ通信の時代へと変わり始めていたのだ。
その当時は、「VAN」という言葉が流行した。Value Added Networkの頭文字をとった略語で、日本語では、付加価値通信網と訳される。何が「付加価値」かというと、それまで通信といえば「音声」のやり取りを意味していたが、それに加えてさらに「データ」のやり取りを効率的に処理する点で、価値が加わっている、すなわち「付加価値」があるからだ。
もうひとつ「C&C」という言葉もよく耳にした。これは、Computer and Communicationsの頭文字をとった略語で、コンピュータと通信の融合による新しいビジネスを展望して、日本電機(NEC)が提唱した概念だ。通信自由化の背景には、「新しい技術で市場が拡大する」との期待があったといえるだろう。
パソコンとインターネットが変えた1990年代
それ以前は、コンピュータと通信の融合といっても、金融機関や大企業、官公庁などの限られた領域にとどまっていた。メインフレームと呼ばれる大型コンピュータは、とても一般家庭では購入することができず、データ通信も専用線による閉じたネットワークが主流であった。
この状況を劇的に変えたのが、パソコンとインターネットだ。ハードウェアやソフトウェアの技術開発によって、「誰でも買える」「誰でも使える」「誰とでもつながる」というオープンな情報ネットワーク環境が生まれ、利用のすそ野が飛躍的に広がった。
もう一つ重要な変化が起きていた。携帯電話が一般に普及し始めたことだ。当時は、日本でも利用する人はまだ数百万人程度で、通信の「脇役」に過ぎなかったが、後に大きな変化をもたらす源流が、この時期に生まれた。
【次ページ】国際社会は、ITブームの光と影をどう認識したか
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