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- 2016/08/16 掲載
米MITを凌ぐインド大、「超熾烈」なエリート教育の全貌 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(77)
多様なインドのエンジニア育成
3月の現地調査では、トップレベルの大学教育で有名なインド工科大学(IIT: Indian Institute of Technology)、政府の研究機関で社会人エンジニアの研修にも熱心なC-DAC(Center for Development Advanced Computing)、新しい教育を目指して1990年代末に官民共同のPublic Private Partnership方式で設立された国際情報技術大学院(IIIT: International Institute of Information Technology)を訪れた。
今回は、その中からインド工科大学ボンベイ校(コンピュータ科学・工学部)で実施した人材育成に関する聞き取り調査を報告しよう。
世界をリードするインド工科大学の卒業生
米国のMITをモデルに西ベンガルのカラグプールで第1校が開設され、1958年にボンベイ校、1959年にはカーンプル校とマドラス校、1963年にはデリー校が次々と設立された。1994年設立のグワハティー校と2001年設立のルールキー校を合わせた7校が旧IITと称される。
その後も新設が進められ、現在は計画中を含めてインド全国に20校以上に拡大し、世界に冠たる高等教育が行われている。各校は独立した組織でありながら総体として一つの共同体を形成し、技術、工学教育を中核に、経済、経営、歴史など、人文社会学を含めた教養教育も一部取り入れ、優れた人材を輩出している。
卒業生には、インフォシスの共同設立者であるナラヤナ・ムルティ氏、グーグルCEOのスンダル・ピチャイ氏、サン・マイクロシステムズの共同設立者のヴィノッド・コースラ氏、ボーダフォンのCEOを務めたアルン・サリン氏など世界のIT産業をリードする蒼々たる顔ぶれが並ぶ。
熾烈な競争で選抜された少数精鋭のエリート
教授によると、同学部に入学してくる学生の受験競争は熾烈だ。毎年百万人規模が受験する全国共通試験で選抜されたおよそ15万人が2次試験に進み、IITには総計約1万人が入学できる。その約1万人の中からトップクラスの約100人が最終試験で厳選され、IITムンバイ校のコンピュータ科学・工学部に入学してくる。まさに少数精鋭のエリートだ。
外国人の学生は、米国、イギリス、ロシアなどから短期の交換留学で入って来るが、フルタイムの留学生は少ないという。「IITより米国の大学が入りやすいのではないか」というのがSudarshan教授の見立てだ。
以前は記述式の入試だったが、受験生の増加にともない、今は多項選択式の試験が行われている。そこでは、短時間にどれだけ多くの問題を正確に解けるかがカギとなる。その意味では日本のセンター試験と同様だ。膨大な人数から選抜するためには、これで能力を判断せざるを得ないのだろう。
ところが、入学後の教育は一変する。
【次ページ】IITでは入試とは異なる能力を鍛える
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