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- 2017/01/13 掲載
Society 5.0時代の新しい働き方、ギグ・エコノミーは何をもたらすのか 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(82)
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イノベーションが導くSociety5.0
この連載でたびたび報告しているように、イノベーションの波は、これまで新技術とは無縁だった途上国にもおよび、経済発展に向けた躍動感が生まれている。先進国でも、ドイツの「インダストリー4.0」のように、持続的成長と社会変革の原動力として、イノベーションを政策の柱に据える動きが盛んだ。
日本では、2016年に閣議決定された第5期科学技術基本計画で、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな社会として「Society 5.0」という概念が提唱された。
そこには、世界規模で「情報のネットワーク化」と「人材の流動化」が進む中、イノベーションが高齢化などの社会的課題を解決し、持続的な成長による多様で豊かな社会への変革を先導していくとの期待が込められている。
複数のアイデンティティをシェアする
ふりかえると、20世紀の工業社会では、企業という組織の内部取引で多くの頭脳労働が創出されてきた。そして今、21世紀の情報社会では、時間と空間と組織の枠を越えて英知の結集を可能にするイノベーションが進行中だ。これに続く「新たな社会」では、仕事と雇用の形態が大きく変容し、「新しい働き方」が生まれてくるだろう。カギを握るのは、「複数のアイデンティティ」という概念だ。
生産者と消費者を合成した「プロシューマー」の概念を提唱したToffler (1980)は、農耕社会で一体化していた生産と消費が、工業社会では分離されてしまい、情報化の波によって再び一体化すると展望した。
確かに、社会的存在としての人間は、本来、生産者としてばかりでなく、消費者として、さらには、家族、隣人、友人など他者との多様な関係性の中で生活を営んでいる。つまり、個人は大小様々な集団に帰属する「複数のアイデンティティ」を擁しているのだ。
ただ一つの帰属集団しか認めない社会の危うさ
複数のアイデンティティを否定する社会は危うい。ノーベル経済学賞を受賞したSen (2006)は、アイデンティティの複数性を考慮せず、人間をただ一つの帰属集団で認識することの危うさを原理主義的なテロなど国際社会の緊張と絡めて論じている。日本の社会でも、複数のアイデンティティを認めない危うさが露見しているようだ。20世紀の工業社会では、企業という「生産」のための「組織」が著しく増殖し、個人にとって第一の帰属集団となった。長期雇用を特徴とする日本では、とりわけ、その観が強い。
極端な場合は、企業への帰属が唯一無二のアイデンティティとなってしまい、本来は多様な帰属先を持つはずの個人が、息苦しいほどに囚われてしまう仕組みが形成されてきた。長時間労働や過労死は、その負の側面を凝縮している問題といえるだろう。
【次ページ】個人の多彩な所有物を資源化するギグ・エコノミー
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