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  • 2018/10/16 掲載

なぜITの「バズワード」に右往左往してしまうのか 本質を見定める思考法とは 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(103)

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この連載がスタートした2008年は、リーマンショックで世界が揺れていた。当時は、イノベーションの波が途上国にも押し寄せる今の様子は、想像の世界でしかなかった。それが、わずか10年足らずで現実のものとなり、世界の景色は一変した。こうした激動の時代は、目の前の現象に振り回されず本質を見定める慧眼(けいがん)が求められよう。その第一歩は「今起きていることの源流」を探ることだ。
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バズワードに振り回されず本質を見極めるには何が必要なのだろうか
(© Production Perig - Fotolia)

大転換したインフォメーション・エコノミー

 この連載は、リーマンショックの激震で世界が揺れた2008年11月に始まった。以来10年にわたって、ITが経済社会に及ぼす影響を情報経済学や情報化社会論の観点から考察してきた。

 連載開始のさらに10年前は、ITといえば「革命かバブルか」など、期待と疑問が交錯した極論が展開されていた。さすがに2000年代半ばには、肯定的な見解が一般化していたが、それでも、ITによるイノベーションは先進国の話であって、途上国については「デジタル・デバイド」で取り残されるとの懸念が強かった。

 モバイル技術が世界の総人口を超えるほどに普及し、最貧国を含む途上国の人々に稼得機会の拡大と生活水準の向上をもたらすことは、一部の専門家を除き、現実問題としては展望しづらかったからだ。

 だが、今では、情報装備した数十億人の人々が所得水準を高めている。さらに、情報を起点としたヒト、モノ、カネのリアルな動きが活発化し、グローバル規模で「モビリティの増大」も起きている。

虚実混交の現実から「本物」を見定めるには

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 こうした現実の動きを目の当たりにして、グローバル社会の論調は大旋回した。ITこそが21世紀の社会を大きく変容させ、経済発展へと導くイノベーションの原動力との認識が途上国にも広がっているのだ。

 ただし、現実の展開があまりに目まぐるしいと、「現象」を追うことに精一杯で、あふれる「バズワード」に翻弄されてしまう。「玉石混交」という言葉があるが、インフォメーション・エコノミーが引き起こす諸々の現象は、いわば「虚実混交」だ。新現象の中には、すぐに消え去ってしまう虚像=バブルもある。

 もちろん、そのすべてが「よどみに浮かぶうたかた」(『方丈記』)のように、はかなく消え去ってしまうわけではない。いくつかの現象は、次々に連鎖しながら新時代を切り拓く力強い「実態」を備えている。この「実態」が引き起こす新現象は「本物」だ。

 だが、イノベーションの渦中では虚実の見極めが難しい。問題は「本物」を見定めるための揺るぎない「よりどころ」が何かだ。

 さまざまな現象から「よりどころ」を手繰り寄せるには、どうすればよいだろうか。ヒントは、現象と本質を行き来する「帰納と演繹の複眼思考」にありそうだ。

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「虚実混交」の現象を見定めるための思考法が必要だ
(© Nmedia - Fotolia)

【次ページ】変化の時代の「帰納と演繹の複眼思考」
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