• 2016/01/20 掲載

孫子が説く、組織でプロジェクトを成功させるための「道」の研究とは(2/2)

現代のビジネスに「孫子の兵法」を活かす(中編)

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古代中国と現代社会に共通する「組織戦」&「プロジェクト性」

 どちらかというと我々が生きている日常とは、平時である。いや、どちらかと言わなくとも、圧倒的に平時である。そもそもなぜ平時に生きる我々が、孫子にヒントを求めることが可能なのかということを、正しい順序で考える必要がある。

 我々は戦争をしているわけではない。戦争をしていない我々が、時代も目的も遠く離れた孫子にヒントを見いだせる(あるいは見出したい)と考える理由は、一体どこにあるのだろうか?

 それは、双方に共通しているものがあるからだ、と考えるのがやはり妥当であるだろう。

 第一に、我々の企業社会における活動は、組織的に行われるものだということだ。組織であれば、それが組織である以上、5人だろうが10人だろうが1000人だろうが、その悩みの根源は同じであって、常に「いかにその力を結集するか」が問われるものである。より正確に言えば、「どうして人はこうも好き勝手してその力をうまく結集することができないのか」ということに、人は常に頭を悩ませてきた。

 第二に、プロジェクト的であるということである。完全にルーチン化された業務世界に生きている人は、きっと孫子を必要とはしない。来る日も来る日も定型的な作業をする人は、弱者が強者を倒す「大番狂わせ」を演じる必要もなければ、人を欺く必要もない。

 プロジェクトの世界では、予めその行程を明示することができない。明示することができたら、それはルーチンワークの世界である。いざ現場に立った時に、予測を立てることが極めて困難な世界である。戦争とはその最たる例であるが、今日の企業社会も負けず劣らず、プロジェクト的である。もはや一「事業」ではなく一「企業」そのものがプロジェクトに近いような感覚がある。

 孫子では、勝敗を決するための最重要となる五つの要素、「五事」のなかでも筆頭の概念である、「道」を説明する言葉として、「これと死すべくこれと生くべくして、危(うたが)わざるなり」というフレーズが続く。

 そのまま読むと、「民衆に対して王やその臣下達の考えを同一化させ、なんの疑いもなく生き死にを共にするようにする」という意味である。「組織」「プロジェクト性」というキーワードを前提とすると、「道」が最も中心的な概念を成すということは、明らかに了解されることであろう。

(後編につづく) 前編はこちら
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